三千世界の英雄王   壱日千次(MF文庫J)



最強も最弱も笑ってぶっ飛ばす、超ド級学園バトルアクションラブコメストーリー。
学園異能バトル、序列制度、最強トーナメントというわかりやすいお約束要素で話が構成されていますが
厨二要素をメタ的に捉え、逆手に取った馬鹿馬鹿しくも熱い戦闘描写はインパクト抜群。
更にはお色気(主人公含む)要素もバッチリと実にエンターテイメント性に溢れた作品ですね。
ラストは全ての元凶にして、私欲のために世界を変革させんとする学園長を撃破。
その後大会に優勝し、景品の賞金と願いを叶える権利によって主人公は大切な二人を救い、ハッピーエンド。
ラブコメ的にはヒロイン二人が嫁確定(将来的にはあと二人ほど増えそう)で終了。

主人公は四年間の昏睡状態から目を覚まし、世界中から異能者が集う学園都市の煉獄学園に入学した少年。
武術の一門で「今世無双の天才」と謳われ、若くして灰咲天凱流の当主となるほどの剣士だったのだが
学園長に課された参加条件「最弱の悪役」を演じる羽目になり、そのせいで周囲からは嫌われている。
少々単純なところこそあるものの、姉思いで正義感の強い、まっすぐな性根をしたヒーロー気質の持ち主で
同時に精神年齢が十二歳ということもあってか、世慣れしておらず、隠し事が苦手だったりと子供っぽい面も。

ヒロインはDQNネームの令嬢、自称ロボットな幼女、ブラコンな生徒会長義姉、新聞服ホームレス娘。
一番のお気に入りは主人公のチームメイト、田中羽瑠歩流祇栖(ヴァルプルギス)。通称プル。
気品すら感じる端正な顔立ち、黒曜石のような知的な瞳、95センチのHカップ巨乳にスラリとしたスタイル。
そして、黒絹にも似た長い髪と、それを彩る素朴なリボンが近づきがたいほどの美貌のアクセントになっている
眼鏡っ子美少女で、頭脳面でも五ヶ国語を操り、中学時代に全国模試で一位をとるほどの才媛。
また、物腰穏やかで、言葉遣いも丁寧かつ上品と絵に描いたような良家のお嬢様であり、真面目な性格なのだが
厨二であることが優秀の証明である煉獄学園ではそれが足枷となり、劣等生になってしまっている。
なお、見た目とは裏腹に結構ドジで、家事が出来ず、方向音痴であるなど、意外に弱点が多い。

評価はC。
異能を強く使うにはその系統っぽい格好や言動をしなければならない。要はキャラクターになりきるほど強くなる。
という、アホっぽくも厨二的に考えると何故か納得できてしまう設定が楽しくて面白かったです。
出てくるキャラたちも、濃い変人か変態ばかりで賑やか極まりないですしそんな彼らが相争うように繰り出す
怒涛のギャグ攻勢には笑いが止まりませんでした。その分、常識人は割を食いまくっていましたがw
本筋は三巻完結と短めながらも、伏線は全て消化され、過不足なく円満に物語は纏まっていた印象。
まあ、最終決戦を含め、毎度バトル描写は良くも悪くも酷い光景ばかりではありましたが…
それこそがこの作品の味にして強みでしたからね。最後までブレなかったのは潔しと感心するばかりです。
しかしこの作品のラスボス、ノリの軽さで誤魔化されていますが、ラノベ史上で最も邪悪だったのではなかろうか。
厨二に満ちた世界を作りたいという果てしなくくだらない動機で罪もない人間を惨殺し、主人公に重傷を負わせ
それを実の娘に見せ付けることで絶望を与えるという所業をまったく悪びれずやったんだからなぁ…