アフティピトス戦記 野山風一郎(一迅社文庫)
若干十八歳にして数々の戦功を上げた天才軍師の、新たな戦場を舞台にしたファンタジー戦記。
エルフやドワーフといった亜人族やワイバーンなどの怪物、そして魔法が存在しているなど
ファンタジー色の濃い世界観ですが、一騎当千や魔法による大規模戦術といった派手な描写はありません。
ただ、情報伝達などの、地味で、しかし戦争に必須要素に役立てられているのが妙にリアルだったり。
ラブコメ面は今のところフラグを立てる下準備が完了したといったところでしょうか。
環境自体は女だらけの親衛隊に男一人というものなので、ハーレム展開はありえそうではあるのですが…
主人公は王族の少女オネットの親衛隊に副官として転属することになった少年。
軍人としては合理主義で冷徹、私情を挟まず、率直で作戦成功のためには手段を選ばない。
そのため、兵士としての実力や指揮能力そのものは高いのだが、上官に疎まれ、転属の連続だった。
しかし、同時に他人を気遣える優しさもきちんと持っており、公では真面目で堅いが
私では自分の階級をあまり気にせずフレンドリーだったりと、公私の区別がハッキリしている。
なお、女性とあまり関わらない人生を送ってきたため、基本的に男女に機微に疎く、朴念仁。
ヒロインは妾腹の姫、生真面目騎士、堅物神官、明朗快活なハーフエルフ、知的好奇心旺盛な魔導士。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(一巻)においての評価はC。
描写そのものは結構シッカリしており、戦記ラノベとしては悪くない出来だとは思いますが
大陸統一や国家再生といった大志が掲げられていないので、イマイチ話に締まりがない印象。
また、いきなり策が失敗し、事実上の敗戦スタートな上、個人武勇のほうが目立つという展開も
軍師というよりは小隊長としての凄さしか伝わってこず、スタートの一巻としては失敗している気が。
一人の力が戦局を動かすタイプの話ではないので、今のところヒロインズの魅力もお色気要因止まりですし。
合理主義で歯に衣着せない、という主人公のキャラそのものは中々に期待できそうなんですけどね。