東京廃区の戦女三師団   舞阪洸(富士見ファンタジア文庫)



大災厄で廃墟となり、魔妖が闊歩する魔境を舞台に繰り広げられるバトルアクションストーリー。
魔力を持つ女子だけの軍隊に、特異な能力を持つ一人の記憶喪失の少年が参入。
更には、彼の能力は少女の身体に触れて魔力を増大させる力なのでお色気イベントの発生も必然。
と、あざとい華やかさに満ち溢れ、お約束に塗れまくった設定が逆に清々しい作品です。
勿論、敵対者が異形の化物である以上、命の危険はありますしバトル描写そのものもガチではあるのですが…
しかしこの作品の戦闘服、極薄素材の全身スーツにネコミミ装備とかあざとすぎである。いいぞもっとやれ。
ラストは魔妖の大群による大規模侵攻を防ぎ切り、そして少年はこれからも人間でありたいと願うのだったエンド。
ラブコメ的には特に進展はないまま終了。好感度自体はいいところまで上がっていたのですが…

主人公は魔境である廃区にて、全裸状態で発見された記憶喪失の少年。
喜怒哀楽が豊かで物怖じしない、自分に正直な性格。常に屈託のない無邪気な笑顔を浮かべており
記憶喪失であるにもかかわらず、まったく焦りもおびえも戸惑いも見せなかったりと肝が太い。
また、見た目は爽やかな美少年だが、サラリとエロゲの主人公のような言動をとるなど、軟派なところも。
普段は飄々としたところこそあるものの、基本的には控えめで茫洋としており、礼儀正しい。

ヒロインは腹黒な小隊長、凛々しい漢娘、常識人お嬢様、クールなツルペタ娘、腐女子な通信担当。
一番のお気に入りは防御系の討魔技能を操る二等(一巻ラストで一等に昇格)討魔士、墨染桂花。
いつも冷静で感情を表に出さず、淡々とした口調で無表情を貫き、物事を客観的に見ているところがあるが
小隊で一番下の階級なのに辛辣な言動が多かったり、正体不明の全裸男子に躊躇なく触れたりと
度胸がある上にかなりイイ性格をしている。趣味は彫金で、部屋には金属プレートやノミが置いてある。

評価はC。
危険なのは東京の一地区だけ、防衛システムは構築済み、人材もそれなりで切羽詰っていない。
と、侵略者と戦う系の他作品と比べると人類主観ではマシな世界観なので悲壮感はあまり感じませんでした。
記憶喪失ながら明るく軟派に振る舞う主人公のキャラも雰囲気を軽くする一端を担っていましたしね。
というか、戦う当人であるヒロインたちからして割とノリが軽い面々ばかりでしたし…
本筋は話そのものに区切りこそついてはいたものの、結局主人公の能力や素性の謎は結局ヒントすらないまま。
思わせぶりに登場したラスボスらしき存在は独り言をつぶやくだけで人前に姿すら現さず。
と、打ち切りにしても投げっぱなし過ぎる終わり方で正直呆然とせざるをえなかったですね。