金は彼女の回りもの 時田唯(電撃文庫)
聖人君子な借金少年と、人間不信な大金持ちお嬢様の織り成す真心ラブコメディ。
とはいえ、ラブコメ要素はあまり濃くなく、真心の大切さに重きが置いてあるいわゆる良い話満載な構成。
メイン登場人物たちはかなり極端な人格ばかりだけれども、嫌味がないためサックリ読み進める事が出来ます。
ただ、序盤で話のラストまでが予測でき、それを超えることはないので目新しさはない感じ。
可もなく不可もなく、平均点を狙って取りに来た的印象を受ける作品ですね。
個人的には、設定的に考えてもうちょっとヒロイン候補出してもいいんじゃないかと思うんですが。
主人公は母の死によって二千万円の借金を背負うことになった薄幸少年。
母の教えから「受けた恩義はきちんと返す」「誠実に生きる」ことを旨としている。
普段から気が利き、かなり真面目でありながらも気さくなところもあり、品行方正で成績優秀。
悪い嘘をつかず、素直で実直で行動に下心がないと一言でまとめるならば正に聖人君子な人格。
そのため、容姿こそ平凡ではあるが女の子受けはよい。勿論周囲の評判も良好。
それでいて嫌味もないというのだから文句の付け所がない。
正直、ここまで人間が出来ている主人公はそうはいないと思われる。
まあ、流石にお金に関して執着心がなさすぎるのは少し引っかかる部分ではありますが。
ヒロインは人間不信なお嬢様、ボーイッシュな幼馴染、天真爛漫な義妹。
主人公の人柄を考えればもっと女の子が寄って来てもよそうだけれども、やはり幼馴染や義妹が牽制しているのだろうか?
一番のお気に入りは主人公に二千万ポンと渡したお嬢様、家宝茜。
両親の遺産を巡る親戚達とのイザコザから、人間不信気味でお金に関してシビア。
愛情や友情といった無償の感情を信じておらず、聖人君子な主人公に対しては戸惑ってばかり。
ただし赤の他人である主人公を救ったりと、その性根は優しさに溢れている。
容姿、行動、能力、家柄といったあらゆる面でテンプレート的なお嬢様の中のお嬢様。
唯一の弱点として、料理が出来ない。とはいえ経験不足というだけでメシマズではない模様。
現時点(一巻)においての評価はD。
決してつまらないわけではないのですが、際立って面白い部分もなく目新しさもないですね。
尖った部分がなく全て想定の範囲でおさまるので、期待は良い意味でも悪い意味でも裏切られない。
というか、この作品は二巻が出るのだろうか?
いくつか伏線らしきものはあるものの、一巻が綺麗にまとまりすぎていて続きを出す意味が見出せない気が。