姫騎士はオークにつかまりました 霧山よん(富士見ファンタジア文庫)
社会の歯車として普通になりたいオークと姫騎士のマイルド社会派コメディストーリー。
創作における固定イメージを逆手に取った、行き遅れに焦る姫騎士と草食系派遣オークという組み合わせが
ギャップ的インパクト抜群で掴みはバッチリですね。主人公がガチでオークな外見なのも斬新ですし。
なお、一応冒険やバトルらしき描写こそありますが、世界観が異世界と現代が混じったものということもあり
基本的にはノリと勢い、そしてパロディを軸に据えたコメディ要素重視の掛け合いがメインになっています。
ラストはテロリストから姫騎士を救い出し、そして二人は結ばれたのだったエンド。
主人公は不景気真っ只中の王国で就職活動に失敗して派遣オークとして働く、正社員を夢見るオーク。
キレると言葉遣いが粗暴になるところこそあるものの、普段は温厚、真面目、内気、ネガティブ。
そして、流されやすく臆病でコミュニケーションに難あり、と実にオークらしくない性格をしている。
その一方で、イザという時は他人を助けるために己の身を投げ出すことが出来る勇敢さの持ち主。
趣味は読書と貯金。特技はいいカイワレ大根の見分け(実家がカイワレ大根農家)
ヒロインは行き遅れに焦る姫騎士、純粋無垢な同僚エルフ、性食者なダークエルフ、兎耳アイドル。
一番のお気に入りは主人公に好意を抱く職場のアイドルなエルフ娘、本間・エルフェン・遥香。
肩くらいまであるぱっつんの青髪、大きく伸びたエルフ特有の耳、華奢な肩幅、真っ白な肌。
と、丁寧に扱わないと壊れてしまうような儚げな容姿と雰囲気を持つ美少女で
性格も素直で純粋無垢、誰にでもわけ隔てない態度で接するなど、およそ邪な部分が見当たらない。
ただ、ちょっと天然でマイペースなところがあり、同時に凄いドジっ娘でもある。
また、虫が平気だったり恋には積極的で一生懸命だったりと、意外にたくましい一面も。
評価はC。
主人公とメインヒロインの肩書きにそぐわないキャラ設定がシュール感溢れる独特な読み味になっている作品。
現代社会っぽい無情な空気を漂わせつつも、所々でファンタジーっぽさが目立ったりする場面もあったりと
話の展開における不条理感が酷いことになっていますが、細かいことは気にしたら負けです。
ただ、ブレずに正社員を望む主人公といい、ヨゴレなメインヒロインといい、個性派で愉快な仲間達といい
読み終わっても印象に残る、尖った個性を押し出しまくっているキャラ作りの手腕は見事の一言。
本筋は色んな意味でタイトル通りっぽいクライマックスからの大団円でしたが、最終巻は恋愛成分が強すぎて
もうひとつのメイン要素である「社会の歯車になりたい」が無理矢理一緒に纏められていたのが残念なところ。
まあ、主人公は事実上逆玉の輿に乗ったのでもう正社員になる必要はないわけですが…