だからお兄ちゃんと呼ぶなって! 桐山なると(ファミ通文庫)
思い出すのが恐ろしい、記憶と絆を辿るドメスティックラブコメストーリー。
記憶喪失になった主人公と超ブラコンの妹のドタバタ日常生活が軸になっている物語です。
ただ、内容は明るいコメディ一辺倒というわけではなく、ミステリー&ホラーな雰囲気もあります。
読み味自体は軽めで全体的にコミカルな印象が強いのでサクサク読めるんですけどね。
主人公の昔と今の違いに戸惑い、様々な反応を見せる登場人物たちも各自で良い味を出していますし。
ラストは全ての真実が明らかになり、そして二人はまた兄妹に戻るのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの萌々が優勢気味ながらも、明確な進展はないまま終了。
主人公は事故で記憶を失った妹と二人暮らし(父母は他界している)をしている高校二年生の少年。
記憶を失う前は勉強こそできるものの、そのシスコンっぷりと奇行のせいでクラス中から嫌われていた。
記憶喪失後は人間関係の記憶が綺麗になくなっているため、ごく普通の常識人へと生まれ変わったが
積極的に迫ってくる妹と、冷たい態度をとってくる周囲の人間に理不尽を感じる日々をおくる羽目に。
記憶喪失の後遺症か、ひとつのことに集中すると他の事を忘却してしまいがちなところがある。
ヒロインは超ブラコンな妹、ぶっきらぼうな幼なじみ、お人よしな委員長。
一番のお気に入りはお人よしな関西人クラス委員長、八葉沙良。
おかっぱ頭にセルフレームの眼鏡、きっちり着こなした制服と、正にザ・委員長そのものな美少女で
性格も外見イメージ通り、真面目で責任感が強く、嘘が苦手で仕事熱心な性格をしている。
また、人を疑うことを知らないお人よしゆえに、無自覚に貧乏くじを引くこともしばしば。
その一方で、怒るとド迫力の関西弁で怒鳴ったりと、怒らせると怖いタイプでもある。
しかし、根は気弱で心配性なため、怒りがおさまると途端にヘコんで自己嫌悪に沈んでしまう。
評価はC。
妹の写真で埋め尽くされた部屋、妹の成長記録アルバム、妹への過剰な愛情が書かれた日記、その他諸々。
とにかく記憶を失う前の主人公がヤバすぎて、もはや笑うどころか恐怖すら覚えるレベルなんですが…
うん、記憶を取り戻すことが当然であるとはいえ、こんな奴に戻るのは嫌だよなぁそりゃ。
身に覚えのないことで酷い目にあいまくる羽目になっていますし、マイナス面がデカすぎる。
その一方で、メインヒロインである萌々を筆頭に色々裏がありそうなキャラが周囲に存在していたりと
単純なドタバタコメディで終わらない不穏な空気もあり、最後まで目が離せない魅力がある作品でした。
本筋は二巻中盤までホラーサスペンスっぽく話が進んでいたかと思いきや、真相はまさかのお涙頂戴展開。
完全に作者さんの掌の中で転がされてしまいましたが、読み味スッキリなのでこれはこれでOK?
ただ、これ結局主人公の記憶や萌々のことなど、根本的な問題は全然解決していない気が…