異世界君主生活   須崎正太郎(ダッシュエックス文庫)



異世界の小国の財政難を解決するために召喚された少年の、超ストレスフリー・ファンタジー。
個々の要素だけ切り取ると、異世界召喚、国家救済、現代日本知識無双、とよく見るものばかりではありますが
日本との行き来が簡易という便利設定のおかげか、シリアス度は薄く、イージーモード臭が強いです。
元の世界の物品を高値で売るという、上記の設定を活かした案もちゃんと使われていますしね。
反面、成功までの過程描写がちょっとあっさり風味すぎるというか、短絡的すぎる感はありますが…
ラブコメ面はヒロインたちの好感度こそ高いものの、今のところ進展はなし。

主人公はある日突然異世界の小国「エルトリア神聖国」に召喚された少年。
読書に没頭するあまり、進学も就職もしなかったニートであり、エルトリア再興に手を貸す理由も
解決すれば衣食住の心配なく読書三昧、という報酬に惹かれたからだったりする。
差し迫った用事がなければ時間を忘れて引きこもってしまうほどの読書狂なインドア派であり
それゆえに、社交性やコミュ力は低く、元の世界でも交友関係は皆無に等しかった。
基本的に面倒臭がりでやる気がないが、手をつけた仕事を投げ出すようなことはしない。
また、本ばかり読んでいたせいか状況適応力が高く、相手の肩書きよりも内面を重視するところがある。

ヒロインは生真面目な神官、天真爛漫な冒険者、お転婆な隣国の姫、厨二病な騎士団長。
一番のお気に入りはエルトリア神聖国唯一の神官にして主人公を召喚した張本人、セリカ・ネウシャート。
ぱっちりとした翡翠色の双眸に、この上なく整った白い細面、輝くような金色の柔らかそうなロングヘアー。
そして、すらりとした細身の体躯が可憐な印象をあたえる美少女。
物腰穏やかで心優しく、生真面目で献身的な性格をしているが、ややズレたところも有している。
可憐な容姿に反し、美味な食べ物に目がない食い意地の張った一面も。

現時点(一巻)においての評価はC。
主人公が日本人の知識、文化、物品を使ってファンタジー世界の国を再興する。
というわかりやすいお題目に違わない展開がこれでもかと詰め込まれている作品ですね。
その分展開が読みやすくはありますが、我欲(読書三昧生活)のためだけに動いていた主人公が成長し
徐々にエルトリアのために頑張るようになっていく描写は見ていて気持ちがいいですし
そんな彼を一生懸命サポートするヒロインのセリカや他ヒロインたちにも好感を抱けます。
本筋は直近の問題であった国家再生は順調、一番の脅威だった隣国とも同盟を結ぶことに成功と
正直現状の山場は全て越えたため、もうやることがなくなった感がありますが、次巻は出るのだろうか…