二周目英雄の荒稼ぎ興国記 しやけ遊魚(HJ文庫)
命を落とした若き英雄が転生した異世界で新たな国造りを目指す、異世界成り上がり戦記。
世界を支配する超大国を相手に商才と戦才で対抗する元英雄の主人公、という構図なわけですが
基盤が交易メインの商会だけあって、経済が重要な位置づけにある点が戦記としては中々新鮮ですね。
大航海時代に似た、海に焦点を置いた世界観もワクワク感をかきたててくれますし。
ラブコメ面は今のところ主人公がヒロイン側を無意識に口説く一方で、進展そのものはなし。
主人公は異世界で新たな命と身体を手に入れた記憶喪失の元英雄。
人懐っこい性格で、いつも堂々かつ飄々とした掴みどころのない態度を取っているが
頭の回転が速く、思考の切り替えも上手い。加えて、発想力、応用力、観察力、扇動力などにも長けており
その上、思い切りのある決断力を有し、戦闘能力も一流と、戦才と商才に優れている。
また、思ったことことを臆面もなくすぐに口に出してしまうところがあるが
同時に、人を惹きつけるカリスマ性を備えているがゆえに、結果的には典型的な人たらし&女たらし。
本文中の情報から推測するに、恐らく元の世界での名前は坂本竜馬であったと思われる。
ヒロインは天真爛漫な若社長、聡明な大商会令嬢、真面目クールな捜査官。
一番のお気に入りは海洋警察フラガラックの隊長を務める捜査官、クラウ・ソラリス。
長弓の腕を買われて若干十八歳にして史上初の女性隊長になったほどの才女だが
帝国では男尊女卑とエリート意識が激しいことから、職場では雑用を押し付けられている。
偏見のない心優しさの持ち主で、フラガラックには「人助けがしたい」という思いを抱えて入隊した。
幼い頃から探究心の塊で、何でも知りたがる性格をしている。
実はかわいいものが好きだったりと、普段のキッチリとした姿からは想像できない女の子らしい一面も。
現時点(二巻)においての評価はC。
主人公に前世で英雄だったという実績があるため、活躍に無理がなく爽快感があるのがいいですね。
ただ、少々テンポが良すぎるというか、展開が速すぎて書くべき部分を書ききれていない感も。
主人公の格好良さやヒロインの可愛らしさの描写など、キャラの掘り下げはできているのですが
肝心の話の進行がサクサク過ぎるがゆえに、読み手が置いてきぼりになっていることも少なくないわけで…
本筋は主人公が貿易王を目指して成り上がっていく過程が痛快に描かれていくようですが
敵は強大な帝国と大商会、更には暗躍する第三勢力の存在もありと、中々先は長そう。