異世界勇者の攻略術   志木謙介(HJ文庫)



チートな勇者を打ち砕く、ジャイアントキリングバトルファンタジーストーリー。
異世界に転移した存在が絶大な力を得てその世界で力を振るい、活躍して成り上がるという
いわゆる「異世界勇者もの」全般に対するアンチテーゼになっている作品です。
まあ、実際のところこの手の設定の物語って、客観的に見た場合迷惑してる人は多いはずですよね確かに。
少なくとも敵対側は本来なら出るはずがなかった被害を受けることになるわけですし。
こういった普通は描写されないマイナスの部分にあえて焦点をあてるという試みは面白いと思います。
ラブコメ面は女性人気は高いけれど、朴念仁で進展が期待できない主人公というのが…

主人公は異世界の法則を乱す勇者を取り締まる凄腕の異世界捜査官。
敵となる勇者と違い特殊な能力を持っていないため、鍛えた刀技と知恵のみで戦うスタイルをとっており
また、交渉力や演技力にも優れているなど、捜査官としては局内でもトップクラスに優秀。
冷淡そうな黒い瞳に整った涼しげな顔というクールそうな外見に違わず、冷静沈着な性格をしており
無茶だと思えることも実は計算づく、ということも少なくない。
弱点は大の機械オンチであることと、ジョークがつまらないこと。
あと、考え込むと人の話も聞かないほど自分の世界に入ってしまう癖がある。
異界管理局の女性局員内で行われているお婿さん&彼氏にしたい局員ランキングで二年連続一位の実績あり。

ヒロインは天真爛漫な炎魔法使い、社交的なオペレーター、物静かな王女。
一番のお気に入りはアステリア王国の第一王女、キルシー・レイ・アステリア。
空色の長い髪、健康的な牛乳色の肌、均整の取れたスタイルの端麗で理知的な容姿を持つ美少女。
いつも無表情で物言いも端的なため、一見すると冷淡な印象を受けるが、それは単に人見知りなため
人と話し慣れていないだけであり、素は国を憂い、平和を願う優しい心の持ち主。
また、異性に対しても不慣れが過ぎるためか、色恋にはかなり初心で純情なところがある。

現時点(一巻)においての評価はC。
職務に熱心で、油断せず、準備を怠らず、どんな時も冷静に任務を遂行する主人公が格好いい。
無情な冷血漢に見えて、相手の心に響く言葉を発することもあったりとギャップ的な魅力もありますし。
その一方で、彼にはない明るさやお馬鹿さを見せるヒロインたちの存在もバランスが取れていてグッド。
本筋は今後も一巻同様、異世界で歪み(勇者)を排除していくという流れになると思われますが
先の展開以上に気になるのは、問題解決後の異世界がどうなったのかという点ですね。
その後がわからないまま「はい次」では読後感が悪いですし、何らかの救済措置があってほしいところ。