我が驍勇にふるえよ天地   あわむら赤光(GA文庫)



痛快にして本格な、多士済々の英雄女傑、武勇と軍略が熱く胸を焦がすファンタジー戦記。
武勇に優れながらも、貴族たちからは雑種と蔑まれている主人公が腐敗した祖国に否を叩き付ける!
という構図が実に燃えます。非道な敵には敗北と共に相応の報いがあるため、爽快感も抜群。
世界観は中世ヨーロッパ風ですが、魔法や特殊武具、魔物といった超常ファンタジー要素はない模様。
しかしだからこそ、戦場を駆け巡る主人公たちの血湧き肉躍る熱闘模様が心を震わせてくれます。
ラストは、主人公は初代大帝として大帝国を成立させ、数十年後、大陸統一を成し遂げたのだったエンド。
ラブコメ的には表向きには政治的都合で妃を一人迎えるも、裏向きにはシェーラが妃となって終了。

主人公は後に大陸統一を果たすことになる、クロード帝国の第八皇子。
その武勇は天下無双といっても過言ではないほどだが、平民の母親から生まれたがために
ほとんどの王族や貴族からは嫌われており、不名誉にも「吸血皇子」の汚名を着せられている。
基本的に仏頂面で感情を表に出さず、寡黙で愛想を見せないなど、不器用で武骨な面が目立つが
質実剛健にして一本気、そして愚直なまでの努力家と、背中で信頼を勝ち取るタイプ。
倒すべき敵には微塵も容赦はないが、民のためならば己の身を切ることも厭わない慈悲深さを持つ。

ヒロインは天真爛漫な軍師。サブに大柄のんびり侍女、勝気な女商人。
一番のお気に入りは主人公の軍師を務める智の申し子、シェーラ。
青い瞳と煌く銀色の長い髪を持つ、世界中の美神のえこひいきを一身に集めたような魅惑的な美少女で
主人公の師である名将ロザリアが一番に目をかけていた天賦の叡智の持ち主だが
知恵者特有の達観したところがなく、むしろ子供っぽさすら見えるほど明朗快活で感情豊か。
そして、年齢相応の愛嬌たっぷりな性格をしており、慕っている主人公の傍を離れることはほとんどない。
大の読書家で、難しい学術書から東方の武侠伝までなんでも嗜む濫読家。

評価はB。
不遇の環境から大反撃を行い、英雄へと駆け上がっていくという王道物語がとにかく熱かったです。
武骨で堅物ながらも義に厚く性根がまっすぐな、正に男が惚れる漢な主人公の格好良さは抜群でしたし
彼を隣で支える知謀の軍師シェーラも、戦場と日常の両面で際立った存在感を見せてくれました。
脇を固める仲間達も頼もしく、個性的で魅力的な面々ばかりなので彼らの掛け合いも十分に楽しめましたし。
本筋は武とカリスマに特化した主人公が聡明な軍師を筆頭とした多くの頼れる仲間たちと共に
次々と立ち塞がる強敵たちを撃破していき、果てには大陸統一を成し遂げるという、正に王道の英雄戦記でした。
味方ネームドキャラも死ぬ時はしっかり死ぬので緊張感はずっと保たれていましたしね。
個人的には大帝国成立から大陸統一までの間の戦いも読んでみたかったところですが…
まあ、大陸統一までかなりの年月がかかる都合上、主人公たちが老けてしまうことを考えると致し方なし。