29とJK   裕時悠示(GA文庫)



29歳の社畜サラリーマンと15歳のJKによる禁断の年の差ラブコメストーリー。
タイトル的に考えて、年齢差というインパクトのある特徴を活かしたラブコメ展開がメインなのかなと思いきや
どちらかというと、社会人としての仕事に苦労する日々の描写のほうに力が入っている印象。
肝心のメインヒロインである花恋との交流にしても、ラノベ執筆指南というクッションがありますし…
それでも、あれもこれもととっちらかっているのではなく、きちんとひとつ話として纏まっているのは流石ですが。
ラストは夢の呪縛から解き放たれた社畜はただひたすらに今日と向かいあって生きていくのだったエンド。
ラブコメ面はメインヒロインの南里花恋と結ばれて終了。

主人公は業務命令によって社長の孫娘と交際することになってしまった29歳の社畜サラリーマン。
目つきの怖さに定評があり、社畜生活の長さから保身思考というか、気を回しすぎる面こそあるものの
目下の人間への面倒見はよく、勤務態度も真面目。性格も誠実&頑固で我慢強く、その上理不尽に対しては
上司に楯突くことも厭わないため、部下たちからとても慕われており、上の人間からも一目置かれている。
学生時代、小説家を目指していた頃に努力で身につけた観察眼と分析力が仕事での武器。

ヒロインは箱入り娘な女子高生、真面目クールな部下、元カノな幼なじみ。
準ヒロイン格にガチャ廃人なブラコン妹、勝気クールなJK、儚げなシングルマザー。
一番のお気に入りは名門女子大卒の才媛な新入社員にして主人公の部下、渡良瀬綾。
すらりとした細身(着やせするので胸は大きい)に、ややツリ目で理知的な顔立ちの美人で
外見の雰囲気と生真面目でお堅く潔癖と委員長気質な性格から「冷凍美人」と陰口を叩かれているが
実はテンパりやすかったり、感情表現が豊かだったり、色恋が絡むとへっぽこだったりと子供っぽい一面も。
上司である主人公に尊敬の念と恋心を抱いているが、アプローチは不器用で臆病。

評価はC。
ラブコメというよりはラノベナイズされたサラリーマン物語といったほうがしっくりくる作品でした。
生活のために働く社会人特有の苦労話と、主人公の今までの行いが実を結び、報われる熱い逆転展開。
リアリティと良い意味でのご都合主義が実にバランスよく両立しており、ライトノベルとして普通に面白い。
その分ラブコメ要素がおまけっぽくなっている感がありましたが。特に最終巻ではほぼ言及がなかったですしね。
作中で既に南里花恋と結ばれているので必要性が薄かったと言えばそうなんですが…
年齢差カップルという特異性がある以上、やはり将来的にどうなったのか? という点は知りたかったですし
振られる段階にすら進めなかった他ヒロインのことも考えると、消化不良感ありなのは否めなかったかと。
キャラに関しては、主人公がシッカリとした大人の社会人として描かれているのが良い感じでした。
彼が大人な態度だからこそ、純粋な好意を見せるヒロインたちの可愛らしさが引き立っていましたし。
本筋は上記の通りラブコメ面には若干の不満はありましたが、お仕事ものとしては綺麗に纏まっていたかと。