ゴブリンスレイヤー 蝸牛くも(GA文庫)
世界を救わずゴブリンを殺すだけの復讐者が贈る、ダークファンタジーストーリー。
ファンタジーな世界観で主人公が冒険者の話なのに、成り上がりを目論まず、魔王を倒そうとするわけでもなく
ただただ復讐のためにゴブリンをあらゆる手段を使って退治する、という独特の価値観に引き込まれます。
また、他作品で登場するゴブリンの「序盤に出てくるだけの単なる雑魚」なイメージを覆し
実際に相対した場合のリアルな厄介さをこれでもかとばかりに描写しているところが凄い。
まあ、その分人類側の被害も悲惨に描かれているので読み味は決して良いとは言えないのですが…
ラブコメ面は主人公がゴブリン退治一筋なキャラ(でも結構モテる)なため、現状進展はほぼ皆無。
主人公は辺境の街で活動している、ゴブリンを倒すことに特化した変わり者の冒険者。
ゴブリン討伐だけで銀等級(序列三位)にまで上り詰めた稀有な存在で、ゴブリン退治には手段を選ばない。
薄汚れた装甲に革鎧と鉄兜を身につけ、左手に盾をくくり、剣を腰に下げた姿がデフォルト。
真面目で几帳面で硬派、そして意外に素直な性格をしているが、基本的に口数が少なくぶっきらぼう。
また、ゴブリン退治以外のことに興味を持っていないがゆえに、陰口を叩かれてもまるで気にしないし
誰に対してもほとんど態度を変えず、割り切った判断をすることができてしまう。
しかし、薄情というわけではなく、かなりわかりにくいというだけで、気遣いができないわけではない。
ヒロインは苦労人な女神官、幼なじみな牛飼娘、朗らかな受付嬢、勝気なハイエルフ、盲目の大司教。
一番のお気に入りは退屈から故郷の森を飛び出して冒険者になったハイエルフの弓手。
すらりと背が高くスレンダーというエルフらしい体型と、浮世離れした美しさの持ち主で
エルフの中では年若(それでも二千歳)だが、弓手としての技量は文字通り人間離れしている。
負けず嫌いな自信家で、歯に衣着せぬ物言いが多く、その上素直ではない性格なため
取っ付きにくいタイプではあるが、意外と面倒見のよい一面を見せることも。
現時点(十六巻)においての評価はC。
テーマの割に内容の重厚さが半端ではないというか、とにかく緊張感が凄い作品。
ぶっちゃけ主人公のやっていることはゴブリン退治でしかなく、客観的にはショボイ活動にしか見えませんが
彼の「世界が滅びる前に、ゴブリンは村を滅ぼす。世界の危機は、ゴブリンを見逃す理由にはならん」
と言い切るまでの執念が、作品に確固たる芯と不可思議な魅力の引力を作り出しています。
その一方で、合間合間での可愛らしいヒロインたちとのラブコメ(?)や個性的な仲間達との掛け合いが
重くなりがちな空気を中和し、日常パートの清涼感を引き立てつつ緩急を作り出しているのもグッド。
本筋は冒険や事件を絡めながらも、あくまでゴブリン退治が本道というスタンスを崩さず進行して行く模様。