おれの料理が異世界を救う! 越智文比古(MF文庫J)
何よりも「食」が尊ばれる異世界に召喚された料理人な少年の、本格異世界グルメファンタジー。
異世界召喚ものにおいては、内政&商売過程や冒険者ものでよく取り上げられる「食」ですが
幕間ネタやおまけ程度の扱いではなく、この作品のようにメインに置かれているのは珍しいですね。
調理シーンもおざなりではなく、それなりにきちんとした描写になっているので結構リアリティがありますし
そのくせ、料理を食べたヒロインたちのリアクションはお色気重視(挿絵含む)というのも
読者サービスとエンターテイメント性をきっちり両立していて良い感じかと。
ラストは世界を破滅させんとするラスボスを料理対決で打ち負かし、一連の因縁に決着をつけてハッピーエンド。
ラブコメ的には一番に告白を実行したメインヒロインのリュミエールが一歩リード状態になるも
他ヒロインも絶対引かないという態度を押し出し、恋の戦いはこれからだ! で終了
主人公は異世界ガストルシェルに召喚された凄腕の料理人である高校生の少年。
元の世界では学力&運動神経は並、趣味は昼寝な普通の学生だったが、特技である料理の技術と知識は
有名な料理評論家の父親によって徹底的に仕込まれたことから、プロ顔負けのレベルを誇る。
俗物な父への反発心から、困っている人を決して見捨てない直情的熱血バカな性格に成長したが
本質的にはおおらかで柔らかい頭の持ち主であり、環境適応力がとても高い。
が、反骨精神の強さと負けず嫌いなところが合わさって、向こう見ずな言動をとることもしばしば。
ヒロインは不器用な没落令嬢、気弱なハーフエルフ、高飛車なエルフ、ぼくっ娘虎人弟子。
あと、エルフ学園長や竜冠族の老幼女などが最終巻で主人公に惚れた模様。
一番のお気に入りは気弱だが料理の腕は確かな十四歳のハーフエルフ娘、ノエル・ハーツ。
淡緑色のふわりとしたセミロングの髪に、澄んだ飴色の瞳。そして背丈にそぐわぬ巨乳を有する美少女。
料理人としては学園上位の腕前なのだが、ハーフエルフであるがゆえに周囲からイジメを受けており
人見知りで気弱な性格も相まって、いつも小動物のようにオドオドとした態度をとっているが
その一方で、自分をイジメた相手に対しても親切に振る舞うことができる慈愛の心の持ち主でもある。
評価はB。
漫画ならともかく、ラノベでは滅多に見ない料理バトルがとにかく熱くて面白かったです。
食事リアクションは別として、料理周りの描写は現実的で説得力があるので雑学的な意味でも楽しめましたし。
まあ、料理偏重な世界観であるがゆえに、不快なキャラが多く出てくるのが難点ではありましたが…
その分、勝負に勝利した時の爽快感は抜群ですし、エンターテイメント性に優れた作品だったと思います。
キャラに関しては、料理を愛する熱血バカな主人公が見ていて気持ちよかったですね。
ヒロインたちも、リアクション要員としてだけではなく、恋する乙女としての可愛さを兼ね備えていましたし。
本筋は打ち切りだったのか、最終巻は駆け足展開ではあったものの物語そのものはきちんと纏められており
読後感良く十分に満足できた、というのが読み終わった後の正直な感想。
まあ、結局登場しないまま終わってしまった王女(ヒロイン候補?)や不穏な動きを見せる敗者たちの存在など
まだまだ話を広げる余地はあったと考えると、ここで終わってしまったのは残念でしたが…