セブンキャストのひきこもり魔術王 岬かつみ(富士見ファンタジア文庫)
魔術が概念化し、物理法則を凌駕した新生魔法世界を舞台にした、新世紀魔術バトルファンタジー。
一人七役な魔術王、という主人公の設定は中々興味深いですが、正直設定をもてあましているというか
人格を持った分身が六人もいるがゆえに、きちんと彼らを扱いきれていない印象がありますね。
多種多様だからこそ、もっと色々出来るだろうし上手くやれるだろう、という勿体無さを感じてしまうというか…
各分身の能力を活かした連携魔術バトルは中々見応えありだとは思いますが。
ラストは世界を滅ぼさんとする破壊神を倒し、そして魔術王は引きこもりから脱し、明るい世界へ―――エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのデュセルが優勢気味ながらも、明確な進展はないまま終了。
主人公は魔術で造った分身に出席を代行させている完全無欠の引きこもり学生。
その正体は己の分身を駒として操る、魔術結社「七詠唱(セブンキャスト)」のリーダー。
魔術師としては世界屈指の力量を持つが、普段は怠惰な引きこもり生活を送っているため、体は虚弱。
また、ロールプレイにこそ長けてはいるものの、コミュ力が低く、異性慣れもしていない。
マイペースで面倒臭がり、私欲(エロ)に魔術を使うことを厭わないなど、割と最低な性格をしているが
その胸の内には、過去の悲劇を繰り返すまいとする熱い正義感を宿している。
好きなものは美少女フィギュア(自作もする)
ヒロインはぼっち気質な第三王女、おっとり系生徒会長、不老不死の留学生、幼馴染な副会長。
一番のお気に入りは「星条青玉」の瞳を宿した人望溢れるウエノ学園生徒会長、ステラ・スティングレイ。
その正体はメトロポリタン合衆国大統領の一人娘にして、かの国から送り込まれてきた国家魔術師。
金髪の巻き毛を高等部でひとつの束ね髪に纏めた、セレブリティの貴婦人めいた雰囲気を持つ美少女で
巨乳を越えた爆乳が正に圧倒的といえる、グラマーなダイナマイトバディの持ち主。
聡明にして頑固ながらも、生粋のお人よしであり、おっとり&天然気質。また、誰にでもフレンドリー。
なお、口調も仕草もお嬢様そのものだが、実は田舎の生まれであるため、私生活では牧歌的な出で立ちで
豚や牛馬の世話をしたり、農作業に汗を流したりと田舎娘丸出しだったりする。
評価はB。
普段は底辺ポジションな主人公が実は世界最強だった、という設定にはやはり浪漫がありますね。
人知れず動くがゆえに大衆から賞賛されないのが残念ではありますが、古き良きヒーローっぽかったですし。
また、エージェントでありながら、チョロくお人よしなヒロインたちもギャップ的可愛らしさがあってグッド。
本筋は伏線の消化からラスボスを含めた全てのネームドキャラの救済までをキッチリ描き切っての完結と
文句のつけようのないハッピーエンドだっただと思います。主人公の分身を各ヒロインに配置することで
ハーレムではないけれど全員を主人公が幸せにしている、みたいな形を作ったのも感心の一言でしたし。