ネクラ勇者は仲間が欲しい   羽根川牧人(富士見ファンタジア文庫)



五人編成のパーティを求めて奮闘するぼっち冒険者たちの物語。
能力はあるけど性格に難ありな問題児たちがパーティを組んで頑張る、というコメディ寄りの話です。
魔王が存在しているファンタジー世界が舞台になっていますが、内容は日常色が濃い目。
全体的にゆるい雰囲気が漂っていますが、熱いバトル描写もちゃんとあるのでメリハリはバッチリかと。
ラストは大勢の人々を生贄に捧げ己の望みを叶えんとしていた兄貴分を倒し、俺の仲間集めはこれからだエンド。
ラブコメ的には明確にフラグが立っているヒロインが二人いるものの、具体的な関係進展はないまま終了。

主人公は仲間いない歴十八年のぼっち勇者。
実は「影の剣王」と評されている(本人に自覚はない)ほどの実力を持ち
人助けをしないと寝覚めが悪くなってしまうという損な、そして勇者らしい気質も有してはいるのだが
目つきが悪く、喜怒哀楽が全然伝わってこない無表情、落ち着かない視線といった外見面。
それと、根暗で小心者、ネガティブ思考、そのくせ調子に乗りやすい、ヘタレで押しに弱い、ムッツリスケベ。
独り言が多い、肝心なところで噛むなどのコミュ障な内面が災いしてぼっち歴が長い。
日課は冒険者日記「飲みログ」をスマホンで更新すること。飲み屋に詳しく、妄想力が逞しい。
趣味は他パーティの会話を録音し、編集した音源を聞きながらダンジョンを攻略すること。

ヒロインはロリエルフ魔法士、腐女子な僧侶、魔王の娘な盗賊、男装の最強戦士。
一番のお気に入りは邪神ヘウレーカに仕える腐女司祭、ダウリナ・ブランジット。
青い輝きを放つふさふさの髪、長い睫毛と絶妙に調和したややタレ気味の目。
そして、エロ系デザインの修道服に包まれたわがままボディのインパクトが強すぎる美少女だが
エロくて妖艶な見た目に反し、中身は騙されやすく無防備な重度の天然であり、母性本能の塊。
また、物腰は常におっとり穏やかで、聖母のような慈愛の心の持ち主でもある。
特技はネクロマンサーの魔法(回復魔法も一応使える)と呪いのアイテムを作ること。

評価はC。
ファンタジーな世界の割に何故か現代風にネットやスマホ(のようなもの)が普及している上
魔族との争いも人類側がかなり押している情勢であるため、緊迫感や悲壮感はほとんどありませんでした。
キャラに関しては、根暗ぼっちだけど実力は最強クラスな主人公のアンバランスさが面白かったですね。
仲間(候補)であるヒロインたちも、クセのある性格をしつつも素質は高く、将来性十分でしたし。
本筋は魔王を筆頭に魔族サイドの主戦力は健在のまま、主要キャラたちの秘密バレイベントも未消化状態と
典型的な打ち切り完結。長く続けて味が出るタイプの作品だっただけに残念無念…