暗黒騎士を脱がさないで　　　木村心一（富士見ファンタジア文庫）



恋と勘違いからはじまる、ブラックナイツ学園ラブコメストーリー。
この手の「主人公とヒロインは両想いだけど物語の都合でくっつかない状態のまま話が進む」系は
どうしても無理矢理な引き伸ばし感が否めないものですが、この作品の場合はヒロインが暗黒騎士という
インパクトで上手いこと難点そのものを笑える面白さに変えていると思います。
ラッキースケベやデートなど、王道のラブコメイベントもバッチリですし、とにかく賑やかで楽しそう。
熱気溢れる異能バトル要素もありますが、全体のシリアス度はそれほど高くありませんしね。
ラストは暗黒騎士を陥れんとする陰謀を粉砕し、八方丸く収まってのハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの暗黒騎士（エリー）さんと結ばれて終了。

主人公は転校生な暗黒騎士さんに恋をしてしまった少年。
「波旬」という名の神様候補である、とある風使い（天狗）の一族の末裔。
山奥での家庭教師による英才教育のみで暮らしてきたが、牛丼に感動して人里に降りてきたという経歴を持つ。
そのため、文明や一般的な人間の暮らしに憧れており、割と常識知らずなところがある。
純朴で面倒見がよく、お人よしな性格だが、実はかなりのムッツリスケベ。
いやらしいことを考えると鼻がにょーんと伸びてしまうという一族特有の体質持ち。

ヒロインは暗黒騎士な金髪童顔娘、無表情系な級友。サブにドＳな級友や卑猥系眼鏡っ娘なども。
一番のお気に入りはいつもヘッドフォンを着けているクラスメイト、田中ノイエ。
青髪でショートのレイヤーボブ、猫のような大きな目と小さな唇の高校生にしては幼い顔の美少女で
基本的に仏頂面で無口。その上淡々としているため、一見すると何にも興味がなさそうに見える不思議ちゃんだが
実はかなりの常識知らずであり、それゆえに思い込みが強く、大胆な言動をとることも。
夢はこの世界（日本）で生きるためにお嫁さんになること。趣味は掌握。好きな食べ物は好みのラーメン。
その正体は異世界の帝国軍所属の暗黒騎士の一人で、本名はエロメイド・ダンジズマ・ゲイル。

評価はＣ。
典型的な「考えるな感じろ！」な作品。そもそも、暗黒騎士の存在にツッコミが入らない世界だからなぁｗ
あくまでメインはテンポの良い掛け合い＆ギャグ重視のドタバタラブコメなので気楽に読むことができました。
キャラに関しては主人公もヒロインも皆チョロ過ぎて心配になってくるレベルですが、逆にそれが良かったですね。
皆単純であるがゆえに、主人公の人の良さやヒロインたちの可愛らしさが純粋に堪能できましたし。
本筋は若干強引かつ性急に話を纏めた感こそあるものの、円満な形で完結していたと思います。
ただ、事の黒幕や全編通した愉快犯キャラがほぼ勝ち逃げ状態だったのには少々モヤモヤが残りましたが…
ラブコメ面にしても、前巻まではちゃんと絡んでいたはずのノイエが最終巻だけはスルーされていましたし。