勇者と勇者と勇者と勇者 川岸殴魚(ガガガ文庫)
空前の勇者ブームで勇者が増えすぎた世界を舞台にした、いまどき☆リアル勇者ライフストーリー。
勇者という存在が主題になってはいますが、正統派なシリアス要素はほとんどありません。
一応、ファンタジーらしい冒険やバトルの描写も用意されてはいますが、内容はかなり軽め。
基本的には売れない勇者六人がシェアハウスで生活する日常系の話がメインになっています。
ファンタジーな世界観ではありますが、現代風刺やパロネタがふんだんに盛り込まれており
全体に漂う緩い雰囲気と相まって、軽快なコミュニケーション重視のコメディに仕上がっていますね。
ラストは魔王城出現からはじまった、大人の事情と利権に塗れた魔王事件を無事(?)に解決。
そして五年後、仲間たちはそれぞれの道を歩み、青年は駆け出し勇者として日々を過ごしているのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのナディーネと良い雰囲気な関係になって終了。
主人公は勇者専門学校を卒業した剣の腕前は一流クラスなひねくれ勇者。
歯に衣着せぬ言動とぶっきらぼうな態度から周囲にまったく馴染めないなど、コミュニケーションが苦手で
また、思ったことは口に出さずにはいられない、誰もが見て見ぬふりをしている現実に触れずにはいられず
加えて、猜疑心と嫉妬心が強く、よく知りもせず他者を見下したりと難のある、ひねくれた性格をしている。
ただ、勇者としての最後の正義感と仲間を大事に思う心はきちんと持ち合わせている模様。
クールぶっているがむっつりスケベであり、性欲は隠しておくタイプ。
ヒロインは生真面目勇者。あと、レギュラーポジションに田舎勇者、なまけ勇者。
一番のお気に入りはアルバイトに精を出す生真面目勇者、ナディーネ・クラーン。
ゆるいカールのかかった艶のあるブラウンの髪と少し目尻の下がった優しげな目の美少女で
そのおっとりとした風貌と口調はまったく冒険に縁遠そうに見えるが、勇者専門学校はちゃんと卒業済み。
性格は情が深く、純粋で人を疑うことを知らず、頑固で生真面目。それでいて意外とたくましいところも。
普段は異世界系食堂でアルバイトをしており、その勤務能力は敏腕の一言。料理の腕前もプロ級だったりする。
ムカデなど、脚がいっぱいある虫が大の苦手。
評価はC。
登場人物同士の掛け合いが軽快でテンポがいいので読みやすさはバッチリ。
内容のほうは現実の厳しさが皮肉られまくっていますが、ファンタジー成分が上手いこと明るさを作っていたかと。
まあ、異世界転生者の存在のせいでファンタジーよりも現代文化のほうが前面に出ている感もありましたが。
キャラに関しては、メインの六人はそれぞれ個性的で愉快な存在感があり、見ていて飽きませんでした。
本筋は一巻から引っ張り続けてきた魔王関連の真相が思ったよりもショボかったのには拍子抜けしましたが
まあ、最初から最後まで作風を貫いたという点ではこれでよかったんじゃないか、と思えましたね。