七星のスバル   田尾典丈(ガガガ文庫)



リアルとゲームが交差する革新的青春オンラインストーリー。
センスで全てが決まるというゲーム設定が中々面白い。まあ、実際に現実にあったらクソゲーですけどw
とはいえ、ファジーであるからこそ、無茶な展開を勢いのまま押し通せるという利点もあるのですが。
ほどよいスピード感と厨二感がある戦闘描写は中々に読み応えがありますし。
なお、MMORPGがメインになっていますが、デスゲーム要素は(メインヒロイン以外)ありません。
ラストは独善によって一人の少女を生贄に世界の未来を意のままにせんとするラスボスを撃破。
そして囚われていた空閑旭姫は解放され、少年少女たちは再び伝説への冒険の幕を上げるのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの空閑旭姫と結ばれて終了。

主人公はかつて世界的人気のMMORPGで、伝説となったパーティー「スバル」の元リーダー。
当時は金色の闘気使い「獅子心王」の二つ名で呼ばれ、ゲーム内最強と言われていた。
無鉄砲ながらも明るくまっすぐに仲間を引っ張っていたが、六年前の事件で幼馴染の旭姫を失ってからは
自分の内にこもって他者を拒絶し、何事にも本気になれない無気力で捻くれた性格になってしまっていたが
本編序盤における旭姫との再会を切欠に、昔の直情熱血な姿に戻りはじめる。

ヒロインは天真爛漫な幼馴染、女王様な幼馴染。
一番のお気に入りは元「スバル」のメンバーにして「精霊の女王」の二つ名を持つ少女、碓氷咲月。
ウェーブがかったセミロングの髪、小さくも整った顔立ち、綺麗に流れている細い眉、白桃のような美肌。
そして、線の細い身体の、正にお嬢様という言葉がしっくり当てはまるタイプの美少女。
昔はがさつで短気で負けず嫌いなお転婆娘だったが、現在ではお嬢様学校に通っていることもあってか
何気ない仕草も上品、佇まいも穏やかで大人びているなど、容姿に違わぬレディに成長した。
ただ、冷酷なまでに敵に容赦しない女王様的Sっ気は昔よりも迫力を増している。

評価はC。
死んだはずの幼馴染との再会、捻じ曲がっていた少年の再起、困難の末取り戻されていく仲間達との絆。
と、青春&王道な熱く燃える展開の数々が、読む意欲をかきたててくれる作品でした。
キャラに関しても、熱意を取り戻していく主人公の姿は素直に応援したくなる格好良さがありましたし
そんな彼をそれぞれのスタンスで支えようと奮闘するヒロインたちの健気さもグッド。
反面、敵の大半が癇に障るゲスや外道ばかりなのでイライラがたまりやすいのが難点でしたが。
本筋は過不足なく、綺麗に全ての伏線と因縁を回収しての大団円な完結と文句なし。
ラストバトルも、仲間全員が死力を尽くし、覚醒を果たして勝利への道を繋いでいく熱さが盛り上がり抜群でしたし。