妹さえいればいい。   平坂読(ガガガ文庫)



個性的な連中に囲まれた妹バカな小説家の日常青春ラブコメストーリー。
主人公がラノベ作家ということで、一見するとクリエイター業に焦点を当てた話に見えますが
方向性としてはどちらかというと「ラノベ的ラノベ作家の日常」を描くことに重点が置かれている感じですね。
あくまで物語の中核にあるのは仕事(小説書き)ではなく、コミカルで青春な日常、そして人間ドラマなんですな。
肌色&恋する乙女成分などの萌え要素も結構濃いですし、和気藹々とした空気が良い感じです。
ラストは「主人公」になった青年は世界中の「主人公」たちへ言葉を贈るのだったエンド。
ラブコメ面は可児那由多と結ばれて終了。数年後には結婚して子供もできています。

主人公は妹を題材にした作品ばかりを書いているライトノベル作家。
とにかく「妹」という存在を愛しており、常に未だ見ぬ究極の妹を創造すべく奮闘している。
なお、妹以外の女性にも、ちゃんと恋愛感情や性欲を抱ける模様。
作家としてのプライドが高く、いつも屁理屈が達者で傲慢不遜な捻くれものだが、根は素直であり
メンタルもそれほど強くないため、割と頻繁に挙動不審になってキャラを崩している。
また、上記の性格に加え、コミュ力が低いことから学生時代はぼっちだった。

ヒロインは完璧超人な義妹、残念美少女な天才小説家、姉御肌な元同級生。
サブに妹分な新人作家や下着好き漫画家なども。
一番のお気に入りは行動原理の100%が主人公への愛な天才小説家、可児那由多(本名は本田和子)
銀髪碧眼のまるで妖精のように現実離れした美しい顔立ちの少女。細身でやや小柄ながら胸は大きい。
作家としては天才肌で、刊行中のシリーズはベストセラーになっている。
自分に正直な性格をしており、眠そうな無表情から淡々とした口調でストレートな発言をすることが多い。
過去、主人公の作品に感銘を受けたことが切欠で彼に恋愛的な意味を含めて惚れこんでいたりと
ヒロイン要素はかなり高いのだが、初対面の主人公にゲロをぶっかけたり、平然と性的な誘いをしたり
頻繁に肌を晒したりと、スペックに反し、言動が非常に残念で変態極まりなかったりする。

評価はB。
妹属性バカな主人公を筆頭に、これでもかとばかりにキャラの個性が前面に出ている群像劇風の作品。
雰囲気とノリの良さが抜群で、どんどん先を読みたくなってしまう魅力があります。
あと、ヒロインたちの好きな異性へ恋心を抱いた過程と経過がきちんと描写されているのも評価点。
これによってラブコメのニヤニヤ度が倍増し、キャラへの思い入れが深まりましたしね。
ただ、妹推しなタイトルなのに義妹が主人公の親友に惚れたり、主人公に振られたヒロインが親友に気持ちを。
と言ったラブコメ的に考えると拒否反応を示す読者が出てきそうな展開もあるので注意。
本筋は最終巻で主要キャラたちの数年後の姿まできちんと描かれており、やり切った感はこの上なかったですし
ガツンと心に響く物語に仕上がっていたとは思いますが、反面、中盤以降話の軸が「主人公」に傾き過ぎていて
これならタイトルは作中に登場した「主人公になりたい」のほうがよかったのでは?というのが正直なところ。