ヴァルハラの晩ご飯 三鏡一敏(電撃文庫)
神々の台所「ヴァルハラキッチン」を舞台におくる、やわらか神話ファンタジー。
主人公の役割は毎日食材として熱湯が煮えたぎる鍋にダイブをすること、というインパクトが物凄い。
勿論それだけならば単なる出オチなのですが、見た目が小柄なイノシシであるがゆえにヒロイン達からは
愛玩動物として可愛がられたり、人間体に変化してラブコメしたりととにかく色んな意味で美味しすぎる。
彼自身も特異な設定に負けないイイ性格をしていますし、お色気イベントも満載と見栄えはバッチリ。
ラストは神殺しの復讐劇を食い止め、主人公の身を苛む呪いも解除されてハッピーエンド。
ラブイコメ的にはメインヒロインのブリュンヒルデと結ばれて終了。
主人公は神々の住まう国「ヴァルハラ」に食材として招かれたイノシシ。
特定の条件で一日一回生き返るという能力を持っており、また、ルーン魔術で人間の姿になることも出来る。
喜怒哀楽が激しいところがあるものの、基本的に温厚で礼儀正しく、素直で明るくフランクな性格だが
内心ではエロオヤジ同然の邪な考え思い浮かべることも多く、あと、調子に乗りやすい。
しかしその一方で、たとえ神の怒りを買いそうになったとしても自分を曲げない芯の強さ
そして、毎日死の苦痛を味わってもヘコたれないタフな精神力を有している。
ヒロインは温和な戦乙女長女。サブに速度厨な次女、物静かな三女、おっとり系四女、真面目な五女。
サボり魔な六女、ツンツン七女、正体不明な八女、元気一杯な九女、アイドルな女神など。
一番のお気に入りはヴァルキューレ九姉妹の長女、ブリュンヒルデ。
青藍色の鎧兜になびく淡い金の長髪が凛々しい戦乙女で、強力な剣の使い手。
しかしその高い実力とは裏腹に、性格は温和で気配り上手であり、誰にでも丁寧な態度で敬語を使う。
また、真面目であるがゆえに色事には臆病なところがあるが、その一方で結構嫉妬深かったりも。
実は他の姉妹からは残念優等生と見られており、微妙に頼りにされていなかったりする。
評価はC。
タイトルからして料理&食事描写重視かと思いきや、ファンタジーらしいバトルやラブコメが目立ち
モチーフとなっている北欧神話に本作ならではの独自色が合わさってコミカルな雰囲気が作り出されていました。
キャラに関しては、とにかく主人公の色んな意味での「美味しさ」の勝利の一言に尽きるかと。
客観的な境遇は悲惨極まりないのに、まったくそれを感じさせず、羨ましいという感想しか出てきませんでしたし。
ヒロインたちにしても、数が多いこともあってか一人一人の掘り下げが足りない感はありましたが
自己主張の強さと肉感的な挿絵の効果が相まって、各自が印象に残りやすい個性を発揮していたと思います。
本筋は不穏な謎がいくつか残る形での完結と、少々消化不良感こそあったものの「ヴァルハラの晩ご飯」という
物語としては綺麗に纏まっていた印象。個人的には九姉妹個別の主役回がもっと欲しかったですが…