戦闘医師野口英雄 草木うしみつ(HJ文庫)
大戦の英雄が最低ランクの最強チームで再出発する、異能バトルファンタジー。
作中で使われている造語が医学っぽいもので統一されているということ以外は、異形の怪物と異能力者が戦う
よくあるタイプの現代異能バトルものですね。当然ながら本来の意味での医療要素はほとんどありません。
まあ、それでも出てくる単語が医学っぽいというだけで、格好良さの印象が段違いなわけですが。
なんというか、空気感が他の異能バトル作品とは違うんですよね。堂々たる誇り高さがあるというか。
おかげでバトル描写にも自然な熱さと盛り上がりが生まれている気がします。これは設定の勝利ですね。
ラブコメ面は主人公の周囲には彼に好意を持つ女の子ばかりと環境的には良い感じですが、さて。
主人公はアフリカ大戦で上層部の命令を無視して片っ端から人々を救った結果、最低ランクに降格され
それゆえに自ら対病魔の新組織「HOUNDDOC」を結成し、チームでの再出発を計る戦闘医師。
いつも飄々と軽口を叩き、軽薄な態度をとっているが、その心の内にはたとえ自分が苦しみ
罰を受けることになろうとも、多くの人々を救いたいというまっすぐな正義の信念を抱いている。
色恋に関しては相手をハントすることには乗り気になるが、されるのは嫌&苦手という自己中心的な性格。
ヒロインは金髪碧眼の自称嫁、ムードメーカーな元気娘、勝気な医師会会長、猫好きなドイツ娘。
一番のお気に入りは「密林の聖女」の異名を持つSランクメディック、アルベルティーナ・シュヴァイツァー。
初々しい少女らしさと武神のような厳かさが同居した、凛とした雰囲気に満ちた可愛さを有する美少女で
尊大な口調に相応しく、気高さと勝気さ、そして高い実力とプライドを併せ持っている。
が、その姿は自分の弱さを隠すためのものであり、心の防壁を剥がせば素直で一途な可愛らしい性格。
仮初の英雄として祭り上げられたことに鬱屈し、その原因である主人公を敵対視し、憎悪していたが
彼に命の危険を救われ、諭されたことで己の弱さを受け入れ、好意を抱くようになった。
現時点(一巻)においての評価はC。
組織に逆らい、その結果不利益を被ることになっても自分の意思と正義を貫き通す主人公の姿が格好いい。
この手の主人公は周囲から蔑まれまくりでストレスが溜まることが多いですが、この作品の場合は
心ある同職や彼によって助けられた国の人々がちゃんと敬意や感謝を抱いていることがわかるため
正しいことをした者が少なからず報われているのが嬉しいですね。応援のし甲斐があります。
彼を慕い、サポートするヒロインや仲間達もそれぞれの役割の中での一生懸命さが光っていますし
ラブコメパートの騒がしさといい、とにかくキャラが活き活きとしているのが好印象ですね。
本筋は病魔というわかりやすい悪がいながらも、相手が相手であるがゆえに、こうすれば終わる
というゴールがなく、更には上位組織との軋轢や闇の組織の暗躍もあったりと先行きは困難ばかりですが…?