100ゴールドショップ『ウサギ屋』 猫之宮折紙(ファミ通文庫)
壊れスキルを手に入れた青年が、ファンタジー世界を商売で席巻する……かもしれない物語。
異世界で商売をする作品は最近よく見かけますが、100ゴールドショップという発想が面白いですね。
日本のリアル100円ショップと違い、置いてある品物がファンタジーらしいのも良い感じ。
また、魔王や世界征服を企む悪の組織などの深刻な危険は基本的に存在しない世界観ではありますが
モンスターと戦う冒険者がいるだけに、バトル描写もきちんと用意されています。
ラブコメ面は主人公が鈍感なこともあり、今のところヒロイン側が一方的に熱を上げている様子ですが…?
主人公は十七歳の時に異世界に飛ばされ、冒険者となった結果、英雄になってしまった少年。
つけられた異名は「赤い影」。最難関のダンジョンをソロでクリアし、レベルカンストしてしまったため
その時に手に入れたチート能力を利用することによって100ゴールドショップを開店した。
正体を隠した冒険者としての勇名に反し、素の外見はどこにでもいそうな黒髪黒眼の童顔をしている。
いつも飄々としながらも自身の損を厭わないお人よしな性格で、年下の面倒を見ることが好き。
かと思えば、ふざけたり黒い部分を見せたりと、一緒にいて飽きないタイプ。
名誉やお金よりも楽しさを求めて冒険者をやっているため、英雄扱いを好んでいない。
ヒロインは妹分なシスター、ミーハーなお嬢様冒険者、肉食系なネクロマンサーエルフ。
一番のお気に入りは両親不在の教会を一人で切り盛りする若きシスター、アスティア・リーリフェル。
肩まで伸びた茶髪、くりっとした青い瞳、そして控えめな胸と小柄な体格が可愛らしい美少女で
性格はシスターらしく、世話焼きで気遣いができ、まっすぐで頑張り屋。
その一方で、冒険者に憧れ、一人でダンジョンに潜ったり、主人公と共にランクA以上のダンジョンを
攻略することを夢見ていたりと、乙女ながらもロマンを求める少年のような一面も。
出会った頃からずっと本当の兄のように自分に接してくれる主人公に恋心を抱いているが
色恋に初心な上、普段は中々に恥ずかしがり屋なため、妹分扱いから長年抜け出せないでいる。
現時点(二巻)においての評価はC。
主人公は既に異世界で三年間過ごした、という状態からのスタートなので若さの割に精神が安定しており
その上、戦闘力は最強クラス+壊れスキル持ちとかなりチートな設定になっていることもあって
重いシリアス要素が入り込むことなく、全体的にコミカルで明るい雰囲気になっているのがいいですね。
好きな人とのやり取りに一喜一憂する恋する乙女なヒロインたちの姿も見ていて微笑ましいですし。
ただ、本筋に関してはタイトルがタイトルなんだからやはり商売描写を重視して欲しくはありますが。
別に冒険やバトルをするなとはいいませんが、商売のほうがおまけみたいな扱いになっているのはなぁ。
第一、冒険がメインではないのにステータスやスキルを詳しく表示されても目が滑るだけですし…