異世界魔導古書店   年中麦茶太郎(ファミ通文庫)



異世界に転生を果たした最強古書店員の異世界冒険譚。
魔導書古書店という舞台設定に独特の雰囲気がありますね。まあ、店にいないことのほうが多いですが。
基本的にはお客さんが持ち込んでくる多種多様のトラブルの解決がメインになっていますが
本編開始時点で主人公が最強であるため、緊迫感のない、ほのぼのとした雰囲気が強いです。
勿論、バトル描写がないわけではないのですが、主人公が出張った時点で圧勝確定ですからねぇ。
ラストは世界を侵食せんとする混沌の大元を倒し、そして今日も古書店は平和ですエンド。
ラブコメ的には明確な恋人関係成立イベントこそなかったものの、事実上メインヒロインのセラナエンドで終了。

主人公は最強の異能者として、地球に侵攻して来た魔族と戦っていた勇者な少年。
魔王を倒した瞬間、異世界に転生してしまい、女神に拾われ、育てられた結果古書店の店員に。
生まれ変わっても勇者の力を持ち越しているため、戦闘力は世界でも最強。
ただ、外見が小柄で中性な顔立ちであるため、しょっちゅう女の子に間違えられてしまう。
前世をあわせた人生経験と圧倒的な実力があるがゆえに、考え方に淡白なところこそあるものの
物腰穏やかで口調も丁寧と落ち着いた性格をしており、相手が強面の集団であっても物怖じしない。
その一方で、からかい好きであったり、自身の容姿に言及されることを嫌っていたりと幼さを見せる一面も。
異性に対してはかなりの朴念仁だが、同時にムッツリスケベでもある。

ヒロインは残念優等生。サブにマイペースな女神、猫耳幼女ホムンクルス、可愛いもの好きお嬢様など。
二巻でヒロイン入りしそうな魔法少女(?)が登場しましたが、参戦する間もなく完結。
一番のお気に入りは温泉旅館の娘なララスギア魔術学園生、セラナ・ライトランス。
腰まで垂らした銀色の髪に紫色の瞳、そして着やせするスタイルを持つ美少女で
純粋純朴純情にして感情表現が豊かな努力家。そのことから、小動物っぽいと評されることが多い。
優秀な素質の持ち主なのだが、やや短絡的な上洞察力に欠けるなど、見ていて危なっかしいタイプ。

評価はD。
まったりとした空気の濃さゆえに爽快感や盛り上がりには欠けますが、その分読みやすさは上々でした。
キャラに関しては、主人公が要所要所で淡々とした最強チートっぷりを見せてくれましたが
十四歳という年若な立場相応の部分も十分に描かれていたので、嫌味さは感じませんでしたね。
また、そんな彼に頼りまくりな残念お姉さんヒロインであるセラナとの掛け合いも実に楽しかったです。
本筋は最終巻で宇宙レベルの災厄を短い描写で倒すなど、実に盛り上がらないクライマックスでしたが…
いくらバトルメインではないとはいえ、駆け足&急展開にもほどがあるのでは、というのが正直な感想。
最後の最後まで冒険要素ばかりが前に出ていて、折角の古書店要素があまり目立っていませんでしたし。
ぶっちゃけこの設定と作風なら、話を大事にせずに、日常系で通すべきだったのでは…