楽園への清く正しき道程 野村美月(ファミ通文庫)
ファンタジーな世界を舞台にした、若き王様が七人の恋人と正しいハーレムを作るまでの物語。
庶民だった主人公が突然王様に就任するところからのスタートですが、政治や戦争にはほぼノータッチ。
あくまでメインは妃候補達とのコメディ混じりの純愛ラブロマンスになっています。
ラストは六人の花嫁と結婚式を挙げ、皇子様は幸せな楽園で末永く暮らしたのでしたエンド。
主人公は服屋の若旦那として城下町の人気者だったが、実は前国王の隠し子だった青年。
細やかな気配りと爽やかな営業スマイルで、貴族からは品があって謙虚だと支持され、民衆は親しみを感じ
女性には金髪の美青年だと好感を持たれているが、本人はいたって庶民的で貧乏くじを引きやすい苦労人。
お人よしで押しが弱くて惚れっぽく、人と話すのが好きで、女の子と話すのはもっと大好きという軟派な性格。
抜群のコミュ力に加え、金髪に緑の瞳のハンサム顔であることも相まって、女性から好かれやすいのだが
その一方で、好きになった女性からはいい人で終わってしまうタイプでもある。
特技は女性の絵を描くこと。夢は女の子が綺麗になる手助けをして国を美人でいっぱいにすること。
ヒロインはツンドラ皇女、男勝りな女騎士、自信家なお嬢様、薄幸の異国人メイド、ボクっ娘義妹、男装の侍従長。
一番のお気に入りははお嫁さんにしたい系薄幸メイド、ミーネ。
身なりを整えれば勿忘草のような優しい水色の瞳やふわふわとした薄茶色の髪が映える美少女で
その上、体つきはほっそりしながらも胸が大きいなど、容姿の潜在スペックはかなり高い。
が、流れ者の一家の生まれであることが原因で昔から家族以外の人間に嫌われていたため
いつも自信なさげにオドオドしており、性格も控えめで大人しく恥ずかしがり屋と内気さが目立つ。
しかし、何事にも一生懸命な上、清純で健気と美点も多く、正に守ってあげたいタイプの女の子。
なお、本人の純情さに反し、メイド時代に下世話な会話をよく耳にしていたので性知識は豊富だったりする。
評価はB。
まるで御伽噺をそのままラノベにしたようなメルヘンな世界観と善人ばかりの登場人物たちが良い感じでした。
重苦しい展開やギスギスしたやり取りも少なめなので安心して読むことが出来ましたし。
まあ、庶民から王へ、臣下や国民の評判も上々、女性人気も抜群と一見羨ましい環境にいるはずの主人公が
その実本当の望みを叶えられず気苦労ばかりを背負っているのは見ていて不憫ではありましたが。
とはいえ、自身を慕うヒロインたちを娶り、ハーレムを築くのだから必要経費だったともいえるんですけどね。
本筋は最初から最後まで心暖まる優しい物語として、とても綺麗に纏まっていたと思います。
初期から悲劇を予感させていた予言「七番目は手に入らない」にしても、種明かしをされてみれば
意外なオチであると同時に、拍子抜けするくらいあっさりと誰も不幸になることなく解決されましたし。
ただ、終盤の展開が駆け足過ぎたのと、そのせいで主役回(一応最終巻のおまけで主役エピソードはあった)を
もらえなかったヒロインがいた点は残念でしたね。これはやはり打ち切りゆえの詰め込みだったのだろうか…