獣娘小隊にやる気なし司令官が着任しました。   三門鉄狼(ファミ通文庫)



怠惰を愛する司令官と、個性豊かな獣娘たちで贈るファンタジー軍記物語。
特徴的なのは、味方の主力が獣人種であり、それを見事に作戦に活かしているという点ですね。
知力や戦闘力、特化した一芸といった知的生命体なら誰でも持っていておかしくない能力ではなく
種族特有の得意分野という、普通の人間では持ち得ない部分を利用しようという発想が面白い。
それを抜きに考えても、ヒロインが全員獣娘という時点で凄いインパクトがありますし…
ラブコメ面は好意を見え隠れさせるヒロインこそいるものの、今のところ描写そのものは薄め。

主人公は最悪の左遷先で司令官をやる羽目になってしまった怠け者な青年。
体を動かすことが大嫌いだが、読書家なため知識は豊富と軍人としては完全に頭脳労働型。
「頑張らないためなら、どんな努力も惜しまない」をモットーとしており、出世欲もなく
いつものん気にヘラヘラしてばかりだが、物事をよく観察し、知ろうとすることを欠かさなかったりと
自身がやりやすい効率的な環境を作るためであるならば努力を惜しまない。
実はメルキア国王の弟であるラークロウ辺境伯の私生児であり、王族の血をひいている。

ヒロインはメイドな人狐、生真面目な人狼、人懐こい人猫、無口無表情な人兎、気弱な人羊、冷静沈着な人竜。
一番のお気に入りは幼い頃から主人公に仕えている人狐族のメイド、イヅナ。
主人兼幼馴染である主人公を出世させようと、叱咤し、容赦のない厳しい態度をとることが多いが
わかりやすく表に出さないだけで、内心では彼のことを深く信頼し、慕っている。
メイドとしての能力は高く、それどころか書類処理まで優秀と、何気に完璧超人。

現時点(一巻)においての評価はC。
分類としては戦記になるわけですが、その割に血生臭さはほとんどありません。
司令官である主人公の気質もありますが、少なくとも一巻では死者すら出ていないですしね。
ですが、それゆえに普段はやる気なしで怠惰だけど実は有能な主人公と
見た目からして個性豊かな獣娘たちの組み合わせによる日常や活躍が映えている印象。
本筋は後の大乱が示唆されていることから、次巻からは主人公らの飛躍が描かれていくのだと思われますが…
主力の獣娘達は小隊規模、大多数の人間には獣人差別あり、その上敵国の王子には目をつけられている。
というハンデをどう覆していくのか気になるところです。