異世界ならニートが働くと思った?   刈野ミカタ(MF文庫J)



異世界に召喚された天才最強ニートによる働かないファンタジー英雄譚。
七つの種族がルールに基づいた英雄戦争を繰り広げ、覇権を争う。というのが話の本筋なわけですが
話術をメインにした頭脳バトルの色がかなり濃く、戦記&バトル要素はほとんどありません。
ルールと誓約に縛られた勝負が当たり前なので、血生臭さもほぼ皆無ですし。
ラストは全世界ニート化(種族の解放)を果たし、世界の敵となった青年は今日もニートするのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのティファリシアが事実上の勝者(という名の養い係)に?

主人公は最高のニート環境を作るために世界統一を目指す精神ニートな高校生の少年。
常に飄々としつつも気だるげでだらしなく、デリカシー&やる気はゼロ。
また、どんな時にも動じない図太さと、やりたいこと以外はやらないという信念の持ち主でもある。
ただ、その類い稀な観察力と会話術を利用した対人詐術の技量は超一流であり
元の世界ではいくつもの大事件を「面白そうだから」という理由だけで起こしていたりする。

ヒロインは苦労人なエルフ姫、フリーダムな魔族姫、毒舌な神翼族、生真面目な男装騎士、黒幕な妹など。
一番のお気に入りは幻魔族の高貴なる四血姫の一人、クランレウ・シミシカ。
陶器のような白い肌、紅玉の瞳、流れるような銀髪、そして完璧に整った顔立ちの持ち主だが
常に無表情で口調にも抑揚がないため、容姿と相まって人形のように見える美少女。
幻想的な見た目とは裏腹に、かなり自由気ままな性格をしており、痴女染みたところすらある。
主人公と出会い、負けを納得させられたことから彼に心酔し、従者となった。

評価はC。
強大な力と絶対の自信を持って挑んでくる敵を詐術で翻弄する主人公の活躍が実に痛快。
声高に己をニートだと称し、余裕たっぷりに思うがまま生きる姿は一見ダメ人間ながらも存在感抜群で
そんな彼に振り回されつつも、健気に頑張り成長していく相方のティファリシアも良い味を出していたかと。
ただ、ただでさえ頭脳バトルメインだから情報量が多いのに、それ以外の部分でも覚えるべき情報が多く
しかも最終巻では一気に伏線の全てが開示されたため、読破にはエネルギーを使いましたが。
本筋は各キャラが色々な思惑を持って動くも、最後はタイトルである「異世界ならニートが働くと思った?」通り
主人公の一人勝ち(でも結果として皆幸せになっている)になってで終了と、綺麗に纏まっていた印象。
まあ、欲を言うならもう少し後日談というか、各キャラのその後を描いてほしかったところですが…