月天楼の封神電戯   為三(MF文庫J)



月面での謎の石碑の発見をきっかけに月面開発が推し進められ、同時に月・地球間を繋ぐ
仮想空間が発達した世界を舞台にした、月天を仰ぎ仮想空間で神と戦う、望の真・封神の物語。
ベースとなっているのは伝奇小説「封神演義」ですが、舞台が近未来ということでSF色が濃いです。
メインとなる仮想空間でのバトルにおけるシステムもゲーム性がかなり濃いですし。
ただ、それゆえに負けたら魂を奪われると設定にも関わらず、イマイチ緊迫感がないのが難点でしょうか。
ラブコメ面は開始時点で幼馴染の眞子と結ばれる一歩手前状態と、勝敗は既に決している感がありますが…?

主人公は、月都市で消息不明になった父を探すため、月行きの資金を貯める日々を過ごす少年。
ほとんど生き甲斐のレベルでのゲーム好きで、暇さえあれば仮想世界にダイブしている。
痩せっぽちな上にくせっ毛で、顔もイケメンにほど遠いという外見をしており、性格はヘタレ&軽薄。
また、スケベ根性が強く、親しい女の子が相手であれば、結構平然とセクハラ言動を働くことも。
一つのことに集中すると、すぐに他の事を忘れてしまうという悪癖の持ち主だが
その胸の内にはどんなに不幸になったとしても揺るがない強さを秘めている。

ヒロインは猫っぽい神、眼鏡っ娘巨乳幼馴染。
一番のお気に入りは元アイドルな人気者幼馴染、相馬眞子。
年齢の割に大人っぽく見える端整ながら人懐っこそうな顔立ちと、健康的な良スタイルを併せ持つ美少女で
以前は子役アイドルとして芸能界で活躍していた。当然、男子人気は半端なく高い。
根が正直で、少々心配性なところこそあるも、世話焼きで気が利き、交友範囲が広く人を見る目も確か。
と性格の良さも抜群。それに加え、可愛い小物が大好きで趣味は料理と完全無欠のヒロイン力を有している

現時点(一巻)においての評価はC。
決めるべきところで決める主人公、魅力的なヒロインたち、倒すことで爽快感を得られる憎たらしい敵の存在。
と、キャラ造形は申し分ないものの「ゲームにかまけた遅刻の多さからバイトをクビになる」という
主人公の第一印象の悪さが目に付いてしまったのが痛かったですね。
その後どんなに彼が啖呵を切っても「バイト先に迷惑かけまくったお前が言うな」と斜に見てしまいましたし。
まあ、そこに目を瞑ればゲーム要素の濃いバトル描写は中々面白いですし、ラブコメも良い感じなのですが…
本筋は封神しないといけない敵が三百六十五と多すぎな点をどう裁くかが気になるところ。