俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件   七月隆文(一迅社文庫)



お嬢様学校に拉致され、庶民サンプルとして通学する羽目になった少年のラブコメストーリー。
舞台となる学校は外界と隔絶されている陸の孤島とも言うべき場所にあり、生徒たちは皆純粋培養のお嬢様。
携帯や漫画を知らない、男は家族しか見たことなく、かといって否定的な目で見てくる者はいない。
逆に、ひたすら尊敬の眼差しを向けてくる等と、滅茶苦茶極端なご都合主義設定になっています。
それだけにツッコミどころが多いのですが、ここまで来ると一周回ってアリなんじゃないかと思えてくる不思議。
個人的には毎巻ギャグ的に挟まれる挿絵芸がお気に入り。あのタイミングの上手さとインパクトの強さは卑怯w
ラストは人間関係の変化によって、今までよりもっと騒がしく賑やかになった日々が訪れて―――エンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの天空橋愛佳と結ばれるも、他ヒロインは諦めず虎視眈々な感じで終了。

主人公は平々凡々であるが故に、庶民サンプルとして選ばれてしまった幸運であり不運な少年。
中学時代にセバスチャンとあだ名をつけられるほどマメで世話好きな性格をしており
気配りも上手く、空気も読めるので集団において重宝されるタイプ。趣味は料理。
学業や運動能力は平均値で、女の子から好意を寄せられてはいない。そして、筋肉フェチの男好き。
というのが表向きのサンプルに選ばれた理由。ただし後半は完全に誤解。
ちなみに性癖的には太ももフェチで、作中でも我を忘れて太ももに熱く注目することが多い。

ヒロインはツンピュアお嬢様、完璧お嬢様、超天才お嬢様、剣術お嬢様、暴君系幼馴染、ドSメイド、ステルスメイド。
一番のお気に入りは名前・外見・仕草・性格・能力とその全てがお嬢様の中のお嬢様な有栖川麗子。
能力値は全てが高水準、周囲からは慕われ、家柄も良く、それでいてそれを鼻にかけることもない。
原作開始までの人生で怒ったことも、人を嫌ったこともないという聖女レベルの人格の持ち主でもある。
ただ、結構思い込みが激しいため、自分の世界に入り込んでしまうこともしばしば。
元々は他のお嬢様と同じく男と接する機会がなかったため、異性に対しては純情かつ奥手だったのだが
主人公に恋することによって嫉妬や怒りという感情を覚え、黒い部分が見え隠れするように。
欠点は超がつく音痴であり、そして、その自覚がないこと。

評価はB。
設定自体は滅茶苦茶ですが、ドタバタコメディとしての突き抜け具合的に十分楽しめる作品でした。
空回りしながらも、恋する乙女として好きな人にアピールするヒロインたちの面白可愛さも抜群でしたし。
ただ、主人公はもっと不満を持つべきじゃないかなぁと思わないでもなかったですが…
まあ、美少女だらけのお嬢様学校に男一人という環境を考えれば、不満を持つのは罰当たりですな。
本筋は最初から最後まで同じテンションのまま突っ走りきったところがとにかく凄かったです。
話の締め方も、実にこの作品らしかったですしね。その一方で、最終巻の唐突さには不満が大きかったですが。
いきなりの完結だったので呆気なかったですし、終盤の恋愛関係の決着イベントも描写量が少なかったため
無理やり駆け足で終わらせたようにしか見えないわけで。告白ターンすらもらえなかったヒロインもいましたし。
完結と銘打たれたとはいえ、まだまだ学校生活自体は続くわけですし、できるなら是非続編を読みたいところ。