城下町は今日も魔法事件であふれている   井上悠宇(角川スニーカー文庫)



規律に縛られない騎士と無愛想な天才魔術師、堅物騎士のトリオがおくる街角ファンタジー。
タイトル通り、数々の事件を主人公たちが解決していくミステリー系の話です。
魔法が生活に根付いている世界観であるがゆえに、トリックの後付が簡単に成立してしまうため
厳密にはミステリーものとしては成り立っていないわけですが…
まあ、解決までの過程のやり取りに重点が置かれているタイプの作品なので、気にしたら負け?
ラブコメ面は主人公がヒロインたちから好感を得ている気配こそあれど、今のところ描写は薄め。

主人公は騎士らしくない騎士の青年。
貴族の家で生まれ育った貴族の子弟なのだが、身なりや儀礼をまるで重んじず、だらしなさが目立つため
騎士社会では鼻つまみ者であり、心よく思われていない。そのため、元々は王の身辺を警護する国王親衛隊に
所属していたのに、現在では王都防衛騎士団に異動させられてしまっている。
また、性格面においても、外見ではなく本質重視、正義感は人一倍と貴族らしからぬ価値観の持ち主。
体質(?)のせいで魔法を使うことができないが、剣の腕は超一流。

ヒロインは無愛想な天才魔術師、堅物な従騎士、酒場の女主人、空飛ぶメイド、物静かな音楽家、元王子な王女。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(二巻)においての評価はC。
魔法というミステリー殺しの要素をあえて世界観の主軸に置くという試みが中々面白い。
考えてみれば、主人公たちが魔法事件と相対し解決に動く作品は多々ありますが、それはあくまで
バトルの前フリでしかないですからね。捜査そのものに主眼が置かれている構成は新鮮さがあります。
現代を舞台にするよりもずっと制約が緩いので、やれることの幅も広いですしね。
それに、主要キャラも個性派揃いですし、彼らが事件に挑む姿は見ていて飽きません。
本筋は単発の事件とキャラの掘り下げをこなしつつ、国家レベルの陰謀に少しずつ触れていく構成の模様。