天空監獄の魔術画廊 永菜葉一(角川スニーカー文庫)
魔力を持った囚人の少女を集めて脱獄を目指す、スペクタクルファンタジーストーリー。
舞台が監獄、目的は脱獄というインパクト抜群の設定が目を惹きますね。
絵画に封印された魔術を行使するという要素も、一風変わっていて中々興味深いですし。
勿論、監獄内の話なだけに、理不尽な暴力や掟、環境、そして人死といった描写もあるわけですが
だからといってダークサイド一辺倒ではなく、熱いバトルやほのぼの(?)ラブコメもちゃんとあります。
ラストは世界を不当に支配し続け、最後には滅ぼさんとした偽神を倒し、脱獄成功エンド。
ラブコメ的には主人公が世界の王となり重婚法を制定し、四人の妻をゲットで終了。
主人公はある日「天空の大監獄」に看守として閉じ込められてしまった絵描きの少年。
超のつく絵描き馬鹿で、絵に無関係なことには基本的に興味を持っておらず
裸体のデッサンに慣れてしまっていることもあり、女心の機微に疎く、色恋沙汰にも鈍感。
そのため、平然とした態度で大胆に女性を口説くこともしばしば。ただし三巻である程度改善はした模様。
世界中を破天荒な師匠と放浪していた経験から、トラブル慣れしており、順応力&対応力が高い。
また、嘘が苦手な真面目&正直者で、相手が誰であっても物怖じしないタイプでもある。
ヒロインは誇り高い女騎士、詐欺師な踊り子、淫乱シスター、男装の元処刑人、元恋人な吟遊詩人。
一番のお気に入りは作品No.129「虹を待つ裸婦」を身に宿す元修道女、シスター・アネット。
修道女らしく、精錬で敬虔、慈愛に満ちた性格をしており、物腰穏やかで言葉遣いも丁寧なのだが
それと相反するように、その身体は男好きする肉感に満ちている。
前の主人に調教された過去から、他人に触られただけで爆発的に発情する身体になっていたが
二巻にて再調教を受けた結果、現在は崇拝相手である主人公が発情対象になるように上書きされた。
評価はB。
一見すると設定の異質さが目立ちますが、意外にも王道な展開や演出が主軸になっていました。
キャラに関しても、決して善人ではないものの、胸の内に熱いものを秘めている主人公は存在感抜群でしたし
ヒロインたちの恋する乙女的可愛らしさは陰鬱な雰囲気の中の一服の清涼剤になっていました。
本筋はただの脱獄が最終的には世界の命運をかけた戦いに変化するという怒涛の展開ではありましたが
設定と伏線が上手く噛み合い、終わってみれば実に見事な着地が決まっていた印象。
最終決戦の盛り上がりも申し分なかったですし、何より最後の決め技にタイトルを持ってきたのが心憎い。
単独ヒロインエンドを強調させておきながらの、どんでん返しなヒロイン総取りオチも素晴らしかったですし。
しかしある意味当たり前とはいえ、女囚人への拷問描写がやたらとエロい作品だったなぁ…