教導覇帝の完戦常勝譚 稲波翔(GA文庫)
英雄王が落ちこぼれの三姫を導く、無双破軍ファンタジー戦記。
最強主人公による教官要素が付加されている、小国躍進系のファンタジー戦記作品です。
教え導かれる側であるヒロイン三人の内二人の初期態度がダメすぎる点が足を引っ張っている印象。
やる気は伝わってきますし、後々改心もするのですが、最初に好感度落としすぎなのでは…
その分、主人公がシッカリしているし、チート能力無双なのでバランスは取れているのかもですが。
ラストは強大な敵国を撃破し、大陸を統一。次なる戦いまでの一時の平和が訪れるのだったエンド。
ラブコメ的には主人公の王妃の座を巡る女の争いはこれからだ、な感じで終了。
主人公は望む知識を引き出せる異能「万書の力」を持ち、その力で世界を席巻した元英雄。
見た目はどこにでもいそうな普通の好青年だが、そのどこか憂いを帯びた眼差しと
さりげない身のこなしから発せられる超然とした雰囲気は他の者と一線を画している。
万書英雄という大仰な肩書きに似合わず、口調性格共に誰にでもフランクでぶっきらぼう。
また、王として清濁飲み込んだ決断が出来る苛烈さと、大国の皇位を捨ててでも生国に帰還し
幼馴染達を助ける道を選ぶという情に厚い部分を併せ持っている。
なお、女性に対して物怖じするような初心さはないものの、女心にはかなり鈍感。
ヒロインは長女な破壊姫、次女な吝嗇姫、三女な隠れ姫、思い込みの激しい第一皇女、控えめな副官。
一番のお気に入りは十年もの間苦楽を共にしてきた副官、ナミル=クレーエ。
栗色の長髪に、化粧気はないながらも長い睫毛の瞬く穏やかな色を湛えた瞳と、腫れぼったい唇の端についた
黒子がそこはかとない色気を醸し出している美少女で、性格は冷静かつ控えめで物腰穏やか。
また、言動も楚々として丁寧であり、誰に対しても公平で優しく、人を動かすことが上手い。
その上、家事全般に長け、仕事もでき、主人公への忠義心&好意は揺ぎ無しと、色んな意味で完璧超人。
評価はD。
設定上多少は仕方ない面があるとはいえ、前半部でヒロインズの酷さが目に付きすぎるのが痛かったです。
そのせいで彼女らの成長にイマイチ説得力がないというか、主人公の奇抜な教導が凄いというよりも
ご都合主義&結果オーライなだけじゃね? という印象のほうが強くなっている気がしました。
要所要所で主人公が英雄たる実力と王としての厳しさを見せてくれたので話の締まりはあったのですが。
本筋はヒロインたちの成長物語として見ると悪くない出来だったとは思いますが…
その色が強すぎたがゆえに、肝心の主人公の活躍が限定されてしまっていたのが不満点でしたね。
まあ、能力のチート&万能っぷりを考慮すれば、必要な措置ではあったのでしょうが、それでもなぁ…
いっそ回想という形で過去編を挟むなどして、もっと主役らしい存在感を見せて欲しかったですね。