イレギュラーズ・リベリオン   尾地雫(GA文庫)



元エリートの隊長と落ちこぼれ隊員が織りなす反撃の王道バトルファンタジーストーリー。
舞台は異能を操る騎士の養成学校、主人公は問題児揃いの落ちこぼれ部隊の隊長にして元エリート。
と、パッと見は教官ものっぽいですが、上下関係よりも対等な仲間関係のほうが前面に出ているためか
部下へはアドバイスや指示を出す程度で、有事ではチーム連携の大切さが重視されている感じですね。
ラストは力を欲するがために国家クーデターを起こした元兄弟子を倒し、ハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのサヤと結ばれるも、なんやかんやで主人公が次期皇帝に推挙されたため
将来的にはヒロイン全員を娶るハーレムエンドになる可能性は大と思われる。

主人公はマーテリア騎士学院に歴代最高成績で入学し、最強部隊第00部隊員として活躍しながらも
現在では留年した上、最弱と言われる第29部隊の隊長として過ごしている少年。
明るく直情的で勝気で単純と、やや子供っぽいところこそあるものの、正義感が強く、仲間想いな性格。
反面、どこか気が弱いというか、繊細な面も持っており、己の過失で仲間を失った過去のトラウマから
異能が使えなくなり、それゆえに本編開始時点まではやる気のない態度で怠惰な日常を送っていた。

ヒロインは小動物系のドジっ娘、勝気な双剣士、毒舌レズ娘、男勝りな元同期、男装皇女。
一番のお気に入りは第29部隊隊員にして没落貧乏貴族の娘、シスリーネ=シルベルスト。
鏡のようなショートカットの銀髪、人形めいた美貌、そして華奢でスレンダーな体型の美少女。
天邪鬼な性格をしており、言葉遣いこそ常に丁寧ではあるが、淡々とした口調でキツい台詞を吐く。
また、見た目の印象に反し、自分から主人公のファーストキスを奪うなどやたらと行動力が高い。
友人であるマロンを度を越えて溺愛していて「彼女と自分が同時に主人公と結婚すれば間接的に二人が
結婚したことにもなる」という超理論を掲げ、彼に対し日々誘惑という名の扇動と奇行を働いている。

評価はB。
過去と現在の部隊対比がしっかり描かれているため、主人公への感情移入が容易なのがよかったです。
亡き友の意志を継ぎ、隊長として努力し、奮闘する姿は思わず応援したくなる魅力がありましたし。
また、ヒロインたちが見せる不器用な好意も、それぞれの初々しさがあって実にニヤニヤできました。
本筋は四巻という短い巻数の中、伏線の消化や因縁との決着などがきちんと描かれており
仲間達の力を借りて決着の一撃を叩き込むシーンを筆頭にしたラストバトル一連の流れも申し分なかったのですが
それだけに、主要キャラ全員の活躍を一巻に詰め込んでしまった最終巻の圧縮展開は残念の一言。
敵サイドの大半が掘り下げが足りずポッと出感満載だったため、爽快感も足りませんでしたし。
せめてもう一巻使って前後編でやるべきだったと思うのですが、やっぱり打ち切りだったのかなぁ…