お前のご奉仕はこの程度か?   森田季節(GA文庫)



血族と呼ばれる一族が支配している帝国に迷い込み、そこの住人に下僕にされてしまった主人公のお話。
設定の割にはかなり軽い話になっているので安心して読めます。
ヒロインもそれぞれ極端なところもあるけれど皆可愛いですしね。
ただ、ヒロインがボケて主人公が突っ込むシーンがやたら多く、少々くどく感じることも。
……というか、主人公が不憫すぎてたまに読んでてつらくなりますw
ラストは色々あったけれど、全てが元の鞘に収まって結局は変わらない日々が続いていくエンド。
ラブコメ的には決着どころか進展すら殆どないまま、俺たちの恋はこれからだ風味な終わり方でした。

主人公は人間の女の子にモテまくるという呪いをかけられている高校生。
一見すれば羨ましい呪いに見えるも、年齢外見問わず女性に言い寄られ、男には嫉妬されるので本人的には不幸。
外見は女顔で結構美形、ツッコミ気質ではあるものの性格も穏やかで呪いがなくてもモテる要素は持っている。
困っている人がいたらとりあえず手を差し伸べるタイプ。
呪いのせいで初対面の女性には警戒心が強いが、別に女性に興味がないわけではない。
ありえないレベルでの情報弱者で、ニュースや新聞などは全く見ないため首相の名前すら間違ったりする。

ヒロインは気位の高い発育不良なご主人様、その姉である傲慢不遜な皇帝陛下。
あとは超ネカティブクラスメイト、ストーカーロリ暗殺者、ゆるゆる大司教、皇帝愛MAX騎士、虚弱姉。
一番のお気に入りはネガティブ思考なクラスメイト、四条環。
普段は黒髪を靡かせる大人しめの清楚な和風美少女なのだが、かなりの悲観的思考の持ち主。
しかも一度ネカティブモードになると、なかなか帰ってこなくなる。
実家はコンビニだが、両親が何度も色々な事情で替わっており家庭環境は複雑の一言。
自分の世界にさえ入らなければ面倒見がよく、頼りがいがある優しい少女なので男子からは人気がある。
ただし、たまに心を抉る言葉を吐くことあり。そして自分から動くときはやたら大胆だったりもする。
とりあえず最終巻での扱いには泣きました。いくらなんでも不憫すぎるだろうこの娘…

評価はC。
設定的に話が重くなってもおかしくないのに、あえて軽いノリで構成されているのが良かったですね。
下手なシリアスを入れずにゆるゆるラブコメに重点が置かれていたのも好印象。
話を閉じざるを得ない最終巻ではそれがやや悪い方向に出た感じではありますが。
恋愛未決着エンドは別にいいにしても、主人公の鈍感さと煮え切らなさが結構不快なレベルだったのがなぁ。
物語の都合ではなく、鈍感なままだから未決着というのは…成長しない主人公ってどうなんだろうか。
まあ恋人を選ぶのが話の終点ではないのだから、ある意味正しいといえば正しいのですが。
このグダグダ感こそがこの作品のカラーなわけですしね。まとめかたそのものは文句なく大団円でしたし。