セイクリッド・クロニクル   御子神零(GA文庫)



最凶の暗殺者と最強の姫騎士の出会いから始まる最強ファンタジー英雄譚。
主人公とメインヒロインが戦争時代の宿敵同士にして親の仇、という関係性のインパクトが目を惹きます。
ただ、その割に戦争の重さを感じさせる葛藤や悲劇性を強調する描写はそれほど濃くない感じ。
まあ、シリアスを長引かせるよりは、多少脳筋思考気味ではあってもストレートな感情のぶつけ合いのほうが
ライトノベル的には映えますし、スッキリ楽しめますからね。この辺りは特に問題というほどではないかと。
ラストは愛の力で国を襲う脅威を退け、主人公は英雄に。そして俺たちの戦いはこれからだエンド。
ラブコメ面はメインヒロインのマリアと婚約し、イチャイチャラブラブなままに終了。
他ヒロインについては言及されてはいないものの、状況的に後々責任を取ることになる可能性は高い?

主人公はかつてカルネギア帝国の最凶の暗殺者だった少年。
燃える炎のような赤い髪に、鮮やかな緋色の瞳、細身ながら鍛え抜かれたしなやかな肉体を持つ美少年で
性格はまっすぐで誠実、温厚で気遣いにも長けているのだが、素直さが過ぎて恥ずかしい台詞を臆面もなく
サラリと言ってしまう天然女たらしなところがある。そのくせ、色恋沙汰そのものには純朴。
また、暗殺者の称号を有し、物心ついた頃から戦地で生きてきたがゆえに死生観が達観しており
敵には基本的に容赦をしない性質だが、まっすぐな闘争を好むバトルジャンキーな一面も。
戦場で仲間と国に裏切られたがゆえに、自分を救ってくれたマリアに忠誠と愛を誓っている。

ヒロインは最強の姫騎士、凛々しき天才剣士、上品な妖精姫、生真面目な第一皇女、陰鬱な魔女。
お姉さんな闇の聖女、お転婆な狂戦士、幼女猟兵。あと、王女を筆頭に多数の恋慕持ち少女も。
一番のお気に入りはセイントアーク王国が誇る姫騎士、マリア=ザ・ヴァルキュリアス・オブ・クイーン。
わずか十六歳でありながら、戦争を自国側の勝利に導いた救国の英雄で、その実力は世界でも屈指。
光り輝く黄金色の髪に、澄み切った青い瞳、抜群のスタイル、そして神々しいまでの美貌を持つ美少女で
日頃は戦乙女として冷たいと感じるほど凛とした態度を崩さないが、素は隠し事のできないまっすぐな性格。
また、色恋沙汰にはとても初心で、それでいて嫉妬深かったり世間知らずだったりと無防備な一面も。
幼い頃から訓練に明け暮れ、戦場にいた弊害で家事全般(掃除は例外)のスキルは壊滅的。

評価はB(最終巻は販売されておらず「小説家になろう」に掲載されている)
主人公が幼少期から戦争を潜り抜けてきた猛者なため、実力と精神力の両面で未熟さがないのがいいですね。
流れるように女の子を魅了していくたらしっぷりも、ラブコメ的に実に頼もしかったですし。
ヒロインたちにしても、皆色々な意味で情熱的&アクティブな恋する乙女っぷりが存在感抜群。
バトル描写に関しても、良い具合の大味さと演出の盛り上げ上手さが厨二的な格好良さを醸し出していました。
本筋は話に一区切りこそついてはいたものの、倒すべき敵が多数残ったままでの完結と、典型的な打ち切り。
あとがきを見る限り、帝国解放戦、邪神との戦い、世界崩壊と再生への旅とまだまだ続編の構想はあったようですし
それを見られないのはかなり残念。ヒロインもまだまだ増えそうな感じだったのになぁ…