二線級ラブストーリー   漆原雪人(講談社ラノベ文庫)



平凡ながらも楽しい高校生活の中、複雑に想いが絡み合う三角関係学園青春ラブコメ。
三角関係ものということで、勘違いやドロドロ感、すれ違いが目立つ構成の作品なのかなと思っていたら
主要キャラのそんなこと知るかとばかりの暴走&迷走っぷりの半端なさにビックリしました。
そもそも、男一人女二人なのに三すくみの恋愛模様になっている時点でおかしいわけですがw
ラストは色々あったけれども、正三角形な関係は続いていくよエンド。

主人公は一二三高校生徒会の副会長を務める高校二年生の少年。
愛嬌はあるが、ウザさのほうが目立つ上、思考回路も基本的に馬鹿で成績も悪く
ツッコミスキルの高さだけがとりえだったりと、典型的な「主人公の引き立て役になりがちな親友」キャラ。
また、表面上の威勢はいいが、実際の行動は受身&先延ばししがちと、本質的にヘタレな上
いっぱしの正義感はあるけれど、欲に駆られて一時の感情で倫理を踏み外して
その後、犯してしまった過ちに自己嫌悪してしまうタイプでもある。

ヒロインは男装少女な会長、マドンナな書記。
あと、サブポジションに妹な会計、クールビューティーな生徒会顧問。
一番のお気に入りは完璧超人にして親友な生徒会長、一ノ瀬秋。
頭脳明晰、容姿端麗、品行方正、料理など家事もでき、中学までロンドン在住だったという経歴を持ちながら
それらを一切鼻にかけない、気さくでお人よしな性格をしており、リーダーシップと頼り甲斐も抜群。
更には、小粋なボケもかませるなど、典型的な「完璧超人主人公」なキャラをしているが
その正体は、中三の時に惚れた主人公に近づくために高校に男装入学したり、こっそり彼の服を盗み出したり
部屋中に写真を張りまくったり、捏造ボイスを作成したりする変態ストーカーだったりする。

評価はC。
なんというか、色んな意味で凄い作品でした。
客観的に見れば、面倒臭い三人の少年少女が自分のエゴを全開にして三角関係をやっているだけなのですが…
軽妙かつテンポのよいボケツッコミ会話が上手いことドロドロになりそうな空気を中和していた印象。
とはいえ、それでもぬぐいきれない身勝手な感情の生々しさが存在していることも確かだったのですが。
実際、主要キャラ三人は全員間違いなく最低で、それでいて自分の恋に一生懸命でしたしね。
ですがまあ、最後は円満とまでは行かずも綺麗に締まっていましたし、読後感は悪くなかったかと。
しかし変人だらけの中、一人マトモな主人公の妹の存在感が妙に印象に残ったなぁ…