アフターブラック   川田戯曲(講談社ラノベ文庫)



この世界に人知れず存在する悪魔たちと、その身に悪魔を宿して戦う学園バトルアクション。
ヒロインの戦いを偶然目撃する主人公、という典型的な運命の出会いからはじまる異能バトル作品です。
この手の話は非日常の世界に巻き込まれたゆえに仕方なく戦う、というのがお約束ですが
当作品の場合は主人公が非日常を望んでおり、むしろ積極的に巻き込まれようとしている姿勢なのが珍しい。
ただ、それゆえに無遠慮&興味本位が前に出すぎていて少しイラッとくる場面も。
ラストは色々問題は残っているけれど、騒がしくも温かい日々は続いていくよエンド。
ラブコメ的にはヒロイン二人が主人公を挟んで睨み合う三角関係未満の状況「後に義娘も参入?)で終了。

主人公はライトノベルのような非日常に憧れ、実際に夢見た世界に足を踏み入れることになった少年。
小五の頃に読んだライトノベルを切欠にフィクションの世界を求めるようになり、そのためか想像力は豊か。
興味を惹かれたことに関しては、積極的かつ強引で、他の事が目に入らなくなるところがあり
また、厨二病を患っている影響か、心のままに口を開き、やたらとキザな台詞を吐くことも。
他人の気持ちを理解した上で無視し、相手の心に踏み込む癖がある。

ヒロインは相棒な転校生、元同居人な幼馴染、サキュバスな義娘。
一番のお気に入りは主人公のクラスに転入してきた、その身に悪魔を宿して戦う少女、水軋幽花。
青みがかったミディアムの黒髪に、全体的にかなり小柄ながらも、均整の取れた美麗なルックスの美少女で
普段は無口無表情無愛想と、他人を寄せ付けない空気を放っており、変なところで真面目な性格をしている。
しかし、感情が顔に出やすかったり、色恋に純情であったり、甘いものに目がなかったり
負けず嫌いで意地っ張りであったり、胸のサイズが小さめなのを気にしていたりと、素は普通の女の子。

評価はD。
人に害を為す魔物、それを狩る組織と異能者たち。と実に厨二っぽさ溢れる世界観が形成されています。
設定こそありきたりですが、その分ストーリーや展開が飲み込みやすく、読みやすさは抜群でした。
反面、実力も説得力もない綺麗事が鼻につきすぎて、主人公に全然好感を抱けないのがキツかったです。
話やキャラが彼に都合よく動きすぎていて、悪い意味でのご都合主義感も強かったですし。
おかげで、折角のヒロインたちの可愛らしさが「見る目のなさ」で相殺されてしまっていたんですよね。
本筋は一巻の時点である程度話としては綺麗に纏まっていたので、二巻は蛇足だった印象。
というか、敵の首領格は逃がした上、事実上勝ち逃げされている形なのでフラストレーションが…
正直これなら二巻はいらなかったような気が。主要キャラの掘り下げ的には意味があったのかもですが。