魔王なあの娘と村人A ゆうきりん(電撃文庫)
魔王や勇者といった個性を持つ「個性者」がいる現代日本を舞台にした学園日常系ラブコメ。
とにかくこの作品は設定勝ちなところが大きいと思います。
一般人と個性者という絶対的な違いを作ることで、登場人物の思考や行動のすれ違いが自然になっており
そのおかげである程度の無茶が効くため、かなり幅の広い話作りができている印象。
まあ、一番評価するべきはメインヒロインの「魔王」竜ヶ峯桜子の全方位的可愛さですが。
ラストは卒業を経て、魔王だけの村人Aという未来の可能性に向かって歩き出すのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの竜ヶ峯桜子と結ばれて終了。
主人公は村人(イコール一般人)の個性を持つ高校生。
村人の性質として、問われれば真摯に答えずにはいられない。
それ以外では特に秀でた特徴もない、やたらと面倒見がいいだけの平凡な人間なのだが
関わった人のために、損を承知で火中へ手を突っ込んでしまいがちな難儀な性格をしている。
色恋に対しては年齢相応の興味があるも、周囲にいるのが美少女とはいえ個性者ばかりなため
トキメキと諦観を繰り返す日々を過ごしており、ヒロイン二人に対してもツンデレっぽい態度をとることが多い。
料理が趣味で、お菓子作りに励むこともしばしば。
ヒロインは魔王な委員長、勇者な幼馴染のダブル体制。サブにネクロマンサーやロボット娘なども。
一番のお気に入りは魔王で委員長でお嬢様な竜ヶ峯桜子。
普段は大人しくて素直な清楚系美少女なのだが、知謀系魔王の個性を持っているため
日々人類滅亡の計画を練っているという危険人物だったりする。
ただしその計画の内容は、やたらと気が長く遠大なものになっているのが常なので実害は皆無に等しい。
むしろ、結果的には周囲のためになってしまうことが多く、そのあたりが本人的には不本意な模様。
魔王であるがために人に行動を褒められたりするのが生理的に苦手。あと、実は物凄い音痴。
評価はB。
個性者と一般人のあらゆる点での違いがシナリオ的にもラブコメ的にも巧く使われていると思いました。
ともすればシュールになりがちなやり取りが、ちゃんと意味のあるものへと昇華されていましたしね。
それに加え、ヒロインたちとのラブコメな掛け合いが実にニヤニヤできたのも評価点。
マイナス点は全編にわたって主人公の一人称で構成されている地の文の鬱陶しさ。
設定的に仕方のない部分が大きいとはいえ、何か起きるたびに否定から入るから毎度イライラしましたし
そもそもハッキリ言って男のツンデレは見ていてウザイだけなんだよなぁ。
本筋はタイトル通りの「魔王なあの娘と村人A」な物語としては文句なく綺麗に纏まっていたと思いますが
反面、個性者の謎や国の思惑といった世界観の根本は結局まったく明かされないままの終了だったので
全体としては消化不良感が大きかったの一言。こっちを突っ込みすぎると方向性が百八十度変わってしまう
というのはわかるので納得は出来るのですが、それでももうちょっとどうにかしてほしかった…