アヴァロン・フェイズ　　　狩野景（講談社ラノベ文庫）



次元を超越して襲来する侵略者たちと戦う少年少女たちのハイスピードバトルアクションストーリー。
異世界からの侵略者、適性を持つ女性のみが起動できる超常武装、男で唯一の適正を持つ主人公。
と、テンプレ設定満載ですが、侵略者が異形の怪物ではなく、女性のみの戦闘民族というのが珍しい。
しかも全員がバトルジャンキー思考なので、世界間戦争やってる割に暗さや重さはあまり感じませんし。
勿論、侵略される地球からすればいい迷惑ですし、バトルは普通に命懸けなわけですが。
ラブコメ面は女だらけに男一人という環境ということで、チヤホヤされている感はありますが、さて。

主人公は異世界の皇女を保護したことを切欠に、戦う力を再び得てしまった少年。
温厚で生真面目、押しに弱く、人の注目を浴びるのが苦手で、困っている者を見捨てておけない性格であり
動揺が全て顔に出てしまうタイプ。そのため、何かと押し付けられ、必要以上の苦労をすることが多い。
基本的に戦いを好まない平和主義者だが、誰かを守るためならば迷わず戦える強さを持っている。
身体つきは小柄で華奢、顔は女の子のような童顔と、何かと絡まれやすい容姿をしているが
幼い頃から格闘術の稽古を欠かさず続けてきたため、見た目とは裏腹に喧嘩は強い。

ヒロインは好奇心旺盛な皇女、孤高のエリート同級生、小柄な脳筋戦士、生意気盛りな妹、面倒見の良い委員長。
一番のお気に入りはペンデュラムアカデミー特戦科のエース、傀鳳リン。
無駄なく引き締まった長身、切れ長の瞳、研ぎ澄まされた刃を思わせる凛とした美貌の持ち主で
氷のような無表情と口数の少なさ、抑揚のないぶっきらぼうな口調もあわせて、周囲から怖がられている。
しかし、その高圧的で無愛想な態度は、生来の人見知りから来る緊張から生まれているだけであり
素は物静かで穏やか、人の名前を覚えるのが苦手と案外抜けたところのある
そして、可愛いものが大好きな、人付き合いや感情表現が不器用なだけの普通の女の子。

現時点（二巻）においての評価はＣ。
テンプレな世界観、特異な立場にいる二人のボーイミーツガールからはじまる王道のストーリー。
正直、敵の設定以外に目新しさがありませんが、文章のテンポが良いのでサクサク読める作品かと。
各キャラそれぞれの能力を駆使したスピード感のあるバトル描写も中々読み応えがありますし。
キャラに関しても、主人公は周囲に振り回されやすすぎる情けなさが少々マイナスではあるものの
決めるべき場面で決めてくれますし、ヒロインたちは恋するアホの子的可愛さが実に萌えます。
ただ、敵側の根本的思考が「戦争＝友好」なので最終的に話をどう着地させるのかが気になるところ。
主人公の謎と合わせて、地球側もなにやら不穏な動きをしているようですし……