いづれ神話の放課後戦争   なめこ印(富士見ファンタジア文庫)



放課後、絶海の人工島学園で密かに行われる神話代理戦争に挑む、神々に復讐を誓う少年の物語。
数々の神話要素がベースになっているタイプの学園異能バトル&ラブコメですね。
前半の敵は人間を好き勝手に弄ぶ神々という遠慮の要らない相手ゆえに、バトル勝利時の爽快感があります。
あと、あざといまでのお色気イベント発生率&肌色率の高さはGJの一言である。
ラストは復讐を果たさんとする妹を兄のエゴが止め、神話戦争は終結。神々の消えた世界で兄妹は贖罪の旅へ。
そして長き年月の果てに、恋人たちは再会を果たすのだったエンド。
ラブコメ的にはシャルロッテとブリュンヒルデと同じ道を歩むことはできずも、心は結ばれたまま、という形で終了。

主人公は聖餐管理機構を調べるため学園に入学し、そこでバロールの神格適合者となった少年。
本編開始前は、妹の捜索と神々への復讐のため教会の施設で異端討伐者としての訓練を受けていた。
冷静沈着で理性的、思慮深く慎重、そして強かな性格をしているが、妹を奪った神への憎悪は人一倍。
ただ、決して冷徹というわけではなく、目的のために近しい者を見捨てられない甘さも併せ持っている。
語学に堪能であり、趣味は外国語のクロスワードパズル。

ヒロインは異性が苦手な先輩、誇り高きヴァルキリー、献身的な後輩、奔放な級友女神。
サブに傲慢不遜な小柄娘やインドア系ボクっ娘なども。
一番のお気に入りは主人公と同じ教会の後輩にしてバックアップ担当の少女、マリア・ミント。
長く豊かな金髪と豊満なスタイル(バストサイズはD)の英国美少女で
温厚で健気で慎み深くお淑やかと、日本人以上に大和撫子っぽい性格をしている。
主人公のことを誰よりも深く慕っており、実際好き嫌いを全て把握しているほどの仲なのだが
彼に好意を抱く女の子が現れるとスイッチが入ったように嫉妬深く、意地っ張りになり
また、彼の身を守るためであれば、状況によっては味方をも犠牲にするという危うい傾向も。

評価はD。
最初は過酷な訓練を潜り抜けてきた戦闘者という設定なだけあって頼もしかった主人公が、話が進むごとに
弱さばかりが目立っていくのが残念でした。相手や事情を考えれば仕方ないと言えばそれまでなんですが…
ヒロインたちにしても、可愛くはあってもメインヒロイン二人以外は恋愛面でスルーされ過ぎで不憫でしたし。
肉体に宿っている相棒ポジのバロールは最後の最後まで場を引っ掻き回す存在として輝いていたんですけどね。
本筋は話そのものこそ風呂敷をキチンと畳んだ形になっており、綺麗に纏まっていたとは思いますが
クライマックスからラストまでの流れに関しては正直個人的には不満が多く残ってしまった印象が強かったです。
やたらと正しいか間違っているか問答が長く、基本敵側が反論の余地の少ない正論を展開しているのに
最終勝者となった主人公は罪だ罰だと後ろ向きなエゴ全開だから共感しにくいし、素直に勝利を喜べない。
要はエンタメ的な爽快感や後味の良さが全編通して少なすぎだっんですよねこの作品って…
エピローグでの主要キャラのその後もサラッと流すだけで消化不良感バリバリでしたし。