いつか世界を救うために   橘公司(富士見ファンタジア文庫)



無敵のヒロインを観察の名の下にストーキングする学園バトルファンタジーストーリー。
ボーイミーツガールならぬ、ボーイストーキングガールな状況が実に面白い。
どこからどう見ても変態行為でしかないのに、当人たちはいたって真剣というギャップに笑いが止まりません。
一応設定的には人類と敵対する謎の敵「アンノウン」という危険な存在がいるわけですが
メインヒロインの舞姫が規格外すぎて、バトル面での悲壮感や危機感はほとんどありませんし。
ラストは一連の黒幕を倒し、そして今日もまた世界を救うお仕事が始まるのだったエンド。

主人公は最強の少女こと天河舞姫を暗殺するため神奈川学園に転校してきた少年少女。
その正体は南関東管理局直轄の特務機関に所属する、外敵排除から内務調査までをこなすエージェント。
肉体年齢は十七歳程度だが、剣呑な視線や身に纏う雰囲気のためか、少し年上に見られることが多い。
変化しない表情、淡々とした口調、無愛想な態度、生真面目な性格から取っ付きにくい風に見えるが
情報収集のために通りすがりの女の子を拉致したり、盗撮や不法侵入を悪びれなかったり
美少女の半裸やボディタッチにもまるで欲情しなかったりと、内面はかなりの変人だったりする。
モットーは「物事は全て観察から始まる」で、実際観察力はかなり高い。

ヒロインは純粋無垢な都市首席。
あと、サブに四天王(尾行盗撮、コレクター、苦労人)や温厚常識人な同僚なども。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はC。
怪物討伐や学生同士の異能バトルなど真面目な部分もありますが、目を惹くのはなんといっても
コミカルに描かれている主人公(+その他)の常軌を逸したストーキングっぷりの数々ですね。
どれもこれも完全にアウトな行為ばかりなだけに、振り切れた面白さがありました。
まあ、観察対象である天河舞姫は裏表のない善良な女の子なので、客観的には不憫極まりないのですが…
とにもかくにも、主要キャラのインパクトという点では文句なしの作品だったかと。
本筋は世界観の軸となっている外敵や異能にはあまり触れず、主要キャラの内輪話がメインになっていましたが
あとがきを読むに、本作はあくまでアニメ「クオリディア・コード」の前フリでしかないようなので問題なし?
しかし、主人公は実は女の子でした! とかぶっちゃけそんなサプライズは求めていなかったですがそれは。