ゲーマーズ!   葵せきな(富士見ファンタジア文庫)



ゲーム好きな絶望的モブキャラ少年とゲーマーたちの青春錯綜系ラブコメストーリー。
物語の軸にゲームが据えられてはいますが、あくまでコミュニケーションツールとしての役割でしかなく
実際にゲームをプレイしているシーンは添え物程度の扱いになっているためゲーム関連の描写は控えめ。
基本的には各自のゲームに対する嗜好やスタンスが重要視されている感じでしょうか。
なので、ジャンル的にはお気楽トーク系部活ものという認識で読んで問題ないかと思われ。
ラストは実に地味で、退屈で、けれどとても愛おしいゲームの物語は続いていくエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの天道花憐エンドで終了。

主人公はゲームが趣味な、真の意味でのモブキャラぼっちの少年。
突出したものがない平凡なスペック。それに加え、人見知り、コミュ力がない、卑屈、ヘタレ。
また、根が小市民的で自分に自信がなく、他人に気をつかって内に篭りがち。
あと、普段は無口だが、好きなもののことになると途端に饒舌になるという典型的なぼっち気質。
そのくせ、ゲームへの無駄な信念だけは一人前と面倒臭い性格をしているが
同時に、他人のために真剣に怒ることができるだけの優しさと強さも持っている。
ゲームに対しては「勝ち負けや技術の上達を競うよりも、ゲーム自体を楽しむ」というスタンス。

ヒロインは完璧スペック少女、ゲーム好きなぼっち娘、隠れエロゲーマーな優等生後輩、親友の恋人。
一番のお気に入りは完璧スペックを誇る学園一の美少女にしてゲーム部部長、天道花憐。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能とハイスペックを誇っており、学内ヒエラルキーの頂点に君臨している。
自らの卓越したスペックを根拠とした自信や行動力を持つものの、そこに傲岸不遜さは微塵もなく
あまり外見に頓着せず、内面から滲み出るものこそ大事だと考えているなど、性格も良好。
ただ、好きな相手には空回りにしかならないツンデレな態度をとってしまったりと、恋愛慣れをしておらず
また、頑なで臨機応変さが足りないため、物事を一刀両断しがちなところがある。
ゲームに対しては「真剣勝負だからこそのヒリつくような空気感を愛している」というスタンス。

評価はC。
とにかく主要キャラたちの早とちり&思い込みから来るすれ違いラブコメっぷりがやたらと愉快な作品でした。
それぞれの性格を上手く活かした勘違いが構築されていたので、引っ掛かりを覚えることもなかったですしね。
キャラに関しては、ウダウダと煮えきらず、言い訳が多い主人公が見ていてウザったいのが難点でしたが
ヒロインをはじめとした他キャラは恋するがゆえに苦悩する姿が初々しく、ほっこりできるのがグッド。
まあ、それでも主要キャラ全員が色々と面倒臭いことには変わりはないのですが。
本筋はこじれにこじれていた各人の恋愛模様を解きほぐした上で、最後の最後に全ての騒動の元凶であった
すれ違いを魔王(的な存在)が叩き潰し、各人が幸せなひと時を過ごすという演出がとてもよかったです。