イチから始める最強勇者育成 琴平稜(富士見ファンタジア文庫)
伝説の勇者が挑む「お願いですから育成させてください」系コメディストーリー。
分類としては教官ものに該当しますが「厳しくも優しい主人公が問題児たちを的確に導いていく」という形が
基本の他作品とは違い、当作品は問題児なヒロインたちにひたすら振り回される構成になっています。
肝心の冒険の旅描写にしても、大半は軽いノリのボケツッコミの連発ですし。
勿論、ヒロインたちの成長や、シリアスなバトル描写も用意されているのでメリハリは効いていますが。
ラストは魔王の誕生を阻止し、けれども俺たちの冒険の旅はまだまだ続いていくよエンド。
ラブコメ的にはヒロイン全員にフラグは立ったものの、関係進展は特にないまま終了。
主人公は女神から魔王打倒のために選ばれし乙女たちの指導を任命された伝説の勇者。
元々は世界で五人しかいないSランク勇者だったのだが、現在の表面上のステータスはレベル1の村人。
長年の一人旅のせいで目つきが悪く愛想もないが、世界を救おうという使命感は誰よりも強い。
面倒見が良いを通り越して過保護、そしてマメで律儀な性格だが、熱意が空回りしやすいところがあり
そのため、努力が報われないこともしばしばだったりする。特技はマッサージ。
欠点はやたらと作戦名をつけたがるのに、ネーミングセンスがないこと。苦手なものは雷とおたまじゃくし。
ヒロインは我侭ツンデレ勇者、おっとり弓使い勇者、猪突猛進元気っ娘勇者。サブにおっとり幼なじみ。
一番のお気に入りは大陸中に名の聞こえた貴族の家に生まれた弓使い、シルフィー。
緩やかにウェーブのかかった銀髪と、おっとりと垂れた夜明け色の瞳を持つスタイル抜群の美少女で
常に穏やかな笑みを浮かべ、口調も上品で丁寧だが、Sっ気があるのか容赦のない言動を取ることも。
名家育ちゆえに人当たりにそつはないが、荒々しく強引に迫られることには弱い。
また、根が真面目であるがゆえにプレッシャーに弱く、自尊心に欠けるため自分を後回しにするところがある。
評価はC。
本人に非はほとんどないのにヒロインたちから下僕扱い、ひたすら一人で苦労を背負い込む羽目に。
と、主人公がやたらと可哀想な設定ですが、コメディな雰囲気と過保護キャラが幸いし、不快感はほぼ皆無。
むしろ、下僕扱いしながらも徐々に主人公に好意を抱いていくヒロインたちの姿にニヤニヤできました。
コメディ一辺倒ではなく、要所要所でシリアス展開も入るので、緩急もシッカリしていましたしね。
本筋は最終巻が駆け足気味だった上に、最後も典型的な打ち切りエンド風な終わり方でしたが
一巻で提示されていた重要な伏線の消化はできていましたし、タイトル的に考えれば綺麗に纏まっていたかと。
個人的には、もっと彼らの冒険を読みたかったので三巻完結というのは残念な結果ではありましたが。