神話伝説の英雄の異世界譚   奉(オーバーラップ文庫)



過去の栄光が神話となった世界に、かつて英雄と呼ばれた少年が再び降臨する新たな神話伝説。
異世界召喚、強くてニューゲームな主人公、皇女がヒロイン、とファンタジーラノベのお約束が満載ですが
主人公が一度目の召喚の記憶を失っていたり、召喚された異世界が一度目から千年後の世界であったりと
所々捻りがきいた設定になっています。まあ、記憶は一巻途中という早い段階で戻るわけですが。
分類としては、単騎無双と知謀が組み合わさった、英雄物語の色の濃い戦記ものといったところでしょうか。
ラストは少女は女帝となり、少年は最愛の人のもとへと帰還し、二人は共に生きていくのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのリズと結ばれて終了。なお、将来は他のヒロインたちとも子供を作っている模様。

主人公は異世界アレーティアに二度目の召喚をされてしまった少年。
一度目のアレーティア(千年前)では「軍神」「双黒の英雄王」と呼ばれ、常勝不敗をもたらしていた。
物腰穏やかにしてお人よしな性格で、いつも温和で優しげな表情を顔に浮かべている。
しかし、その内に秘めた芯は強く、敵対する者や足を引っ張る味方には冷酷かつ残酷で容赦がない。
なお、高校二年生にしては低めの身長と童顔であることから、実年齢よりも幼く見られることが多い。

ヒロインは天真爛漫な皇女、クールな才女参謀、元第三皇女な未亡人。
お転婆な弓使い、聡明なる隣国王女、誇り高き姫騎士、耳長族&獣族ハーフ将軍、ヤンデレ降将なども。
一番のお気に入りは軍神乙女の異名を持つ少女、トレア・ルザンディ・アウラ・フォン・ブナダラ。
帝立訓練学校を首席で卒業し、第三皇軍司令官の幕僚に最年少で抜擢された才女。
小柄で細身、眉毛にかぶさったところで切り揃えられた前髪、くりくりと大きな瞳といった容貌ゆえに
実年齢である十七歳よりも幼く見え、また、小動物のように保護欲をそそる可憐さを持つ。
頑固で義理堅い性格で、普段は冷めた無表情で言動も淡々としているが、誰よりも敬愛している
第二皇帝シュバルツ(主人公のこと)のことに関しては熱心で饒舌になってしまう。

評価はC。
主人公が過去に戦乱を制した経験のある元英雄王なので、戦関連でウダウダ悩まないのがよかったです。
それどころか敵にはかなり容赦がないので進行がスピーディーですし、活躍がわかりやすく華々しいことから
周囲の人間の好意や尊敬、畏怖を集める流れも自然で実に大物感が出ていたと思います。
また、その一方で、ヒロインたちの押しの強いアプローチに弱いところはギャップがあって微笑ましかったですし。
ただ、主人公の背景が重すぎる上、話が進んでも状況が好転してる雰囲気が全然ないため爽快感に欠け
戦争陰謀の連続で日常パートがほとんどなく気を抜く暇がないため、読み味がひたすら重いのが難点でした。
本筋は戦記であると同時に、少女が成長し、少年が己の罪から救われるまでの物語にもなっていたこともあって
ドラマ性がとにかく強かった印象。明らかに主人公死ぬ気満々だったし、ちゃんとハッピーエンドになってよかった…
不満点を挙げるなら、ラブコメ描写の少なさでしょうか。主人公は暗躍ばかりしてたから仕方ないのですが
そのくせ後日談では色んな女に手を出して子供作りまくってるわけだから、過程が気になるんですよね。