聖樹の国の禁呪使い   篠崎芳(オーバーラップ文庫)



聖樹士を育成する学園に入学させられてしまった、世界でただ一人の禁呪使いの新たな人生の物語。
異世界転移、世界で唯一の禁呪使いとなった主人公、魔物と謎が溢れる広大なダンションの探索。
次々と現れる二つ名持ちの世界上位強者たち、と厨二心をくすぐる要素が盛りだくさんです。
まあ、名ありキャラでも死亡や退場があっさり起きるなど、世界観は結構殺伐としていますが…
その分、話に緊迫感が、そして強敵との戦いでの盛り上がりがあるのも確かかと。
ラブコメ面はメインヒロイン二人との重婚(?)ルートを順調に進んでいるように見えますが
フラグを立てたヒロインの大半が上級貴族のお嬢様だから、これ主人公は最終的に王になるしかないのでは。

主人公は謎の白い光に包まれて異世界へと飛ばされてしまった現代日本出身の少年。
禁呪の呪文書を読み上げたことが切欠で、聖ルノウスレッド学園へ入学することに。
元の世界での経験が原因で自己評価が低く、そのため自分のことに関しては大抵のことでは揺らがないが
根がお人よしなため、自分以外の誰かのために怒り、身体を張ることを当然のように思っている。
それ以外では思慮深く、素直で礼儀正しく気も遣えるが、度が過ぎて自覚無き口説き文句を吐くこともしばしば。
また、相手を思いやるあまり、強く言い切れないという欠点も。

ヒロインは孤高のクールビューティー、才女なお嬢様、ゴスロリ学園長、獣耳メイド、人懐っこい級友。
昇格候補に礼儀正しい風紀会長、腹黒生徒会長、奔放なボクっ娘先輩、眼帯ロリババア魔女なども。
他にも、ヒロイン昇格しそうな女の子がチラホラと存在しているようですが…?
一番のお気に入りは悪名高き第六院の出身者にして「銀乙女」と呼ばれる少女、キュリエ・ヴェルステイン。
麗人のような雰囲気のある美人であり、異性はもちろん、同性からの人気も高い。
普段はぶっきらぼうな言動と無愛想で刺々しい態度で人を寄せ付けないようにしているが
それは厄介事に周囲を巻き込まないための配慮であり、実際は不器用な面倒見のよさと優しさの持ち主。
また、沸点が低かったり、根は単純だったり、色恋には不慣れで純情であったりと、素は外面と正反対。

現時点(九巻)においての評価はC。
目立つテンプレ要素が多すぎるがゆえに、逆にテンプレっぽく見えなくなっている作品ですね。
ただ、禁呪という物語における軸こそあるものの、キャラや伏線、重要用語が次から次へと出てくるため
話と設定の全体図をちゃんと把握して読むのに少々苦労するのが難点ではありますが。
キャラに関しては、主人公は自己評価の低い受身型性格ながら、言動は能動的というアンバランスさが
そしてヒロインたちはメイン二人を筆頭にした、ギャップを活かした可愛らしさが魅力的で良い感じ。
本筋は第二部スタート。次巻からは王都を出て他国に行く展開になりそうですが、さて。