光刃の魔王と月影の少女軍師   桜崎あきと(HJ文庫)



魔将の王と鬼謀の軍師の運命の邂逅からはじまる王道ファンタジー戦記。
独自の神話に基づいた世界観や三種類の魔術など、設定に拘りが見える作品ですね。
おかげで、これぞファンタジー! といった感じの華と格好良さがある戦闘描写が映えています。
ラストは侵攻を目論む敵国と黒幕を打ち倒し、ひとまずの平和が訪れて―――エンド。
ラブコメ的には大きな動きがないままの終了だったものの、主人公は後々王になり、複数の妃を娶ると
思われる(本人もその気があるっぽい)ので、一応ハーレムエンドといってもよいかと。

主人公はエルセリア王国六魔将の一人にして「魔王」の二つ名を持つ若き英雄。
並外れた覇気を持っているわけでも、体格に恵まれているわけでもないが、その戦闘力は国一番。
真面目でストイック、それでいて謙虚な性格をしており、義と情に厚い。
人生の半分以上を修行に費やしてきたため、女性慣れしておらず、純粋で純情なところも。

ヒロインは神算鬼謀の軍師、武人系幼馴染、小悪魔系幼馴染、ブラコン姉将軍、竜人の母娘、元皇妃な弓使い。
一番のお気に入りは十三歳の天才少女軍師、アルシェ・メルエット。
あどけなさを残しつつも、儚げで繊細さを感じさせる美貌の持ち主。
誰に対しても丁寧語で喋り、理知的で大人しく、年齢の割に大人びた性格をしている。
生まれる前に生きる意味を決められ、それに従って生きてきたため、感情を殆ど表に出すことはなかったが
素は結構強かかつ大胆で、その上結構頑固だったりする。

評価はC。
ぶっちゃけ、戦記というよりは英雄譚ですね、この物語は。
なのに世界観に漂う空気自体は戦記っぽいため、キャラの言動にチグハグさが出てしまっていた感が。
悪い意味でバカばっかりというか、戦争なのにどいつもこいつも感情論や個人技量を前提に動きすぎ。
更に、主要キャラのみの一桁人数行動&大将格の一騎打ちばかりだったため、軍師の必要性も薄かったという。
二巻打ち切りとはいえ、そもそもキャラの掘り下げや人間関係の進展という点でも不十分でしたし。
とにかく、キャラと設定が噛み合わず、常に違和感を感じてしまう作品でした。
続いてさえいれば、面白くなる余地が多分にある世界観とストーリーだったとは思うのですが…