はたらく魔王さま! 和ヶ原聡司(電撃文庫)
勇者に破れ、部下と共に地球にやってきたフリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー。
元の世界では魔王だったのに、地球では地に足の着いた庶民的生活をしている主人公の姿が面白い。
ここまで良い意味での生活臭のするラノベは珍しいといってもよいレベルで、新鮮な読み味が楽しめるかと。
メイン(ファンタジー関連以外)にやっていることは仕事と日常生活なのに、見ていてまったく飽きませんし。
何よりも、いつかの復権を夢見て地道に現代社会で前に歩んでいく魔王の姿は応援せずにはいられません。
ラストは神討ちの戦いに勝利し、そして人間となった魔王は今日も働くのだったエンド。
ラブコメ的には佐々木千穂と結ばれて終了。ただし、娘一人を核とし、メインヒロインである勇者エミリアをママ。
魔王をパパとした疑似家族環境は続行と、ややこしい人間関係は変わらずの模様。
主人公は勇者パーティに敗北し、都落ちして日本で暮らす羽目になった魔王。
人類側から見れば極悪非道の存在だったのだが、地球で暮らし始めてからは小市民的に。
アルバイトに精を出し、一日の生活に一喜一憂するその姿はどう見てもただの好青年。
とはいえ、魔王時代のカリスマは一応健在らしく、バイト先では職場の人間に頼られ順調に出世を重ねている。
責任感があり、割と気さくで社交性が高く、頭もよく回り、気も利くと普通に能力面はハイスペック。
ただしそれはあくまで人間としては、であり彼は魔王なのだからかなり何かが間違っていると言える。
ヒロインは勝気な女勇者、健気なバイト先の後輩女子高生、苦労人な異端審問官。
一番のお気に入りは主人公のバイト先の後輩にして女子高生の佐々木千穂。
バイト先で出会った頼れる先輩である主人公に好意を抱いており、純朴で純粋、健気で一途。
基本的に温厚、喜怒哀楽の表現がハッキリしているタイプの性格で、イザという時の度胸もあったりと芯が強い。
面倒見がよく、家庭的で、少しヤキモチ焼きなところがあるが、そこがまた可愛らしい。
何気にスタイル(ヒロインの中では唯一の巨乳)もよく、もはや天然記念物レベルの女の子だといえる。
評価はB。
キャラクターと世界観の土台がシッカリしており、文章の流れも丁寧と、純粋に読み物として面白かったです。
生活臭溢れる日常をおくる魔王と勇者(+魔族や審問官など)というギャップも楽しくてよかったですしね。
また、心の成長、異種族間恋愛の難しさや将来の進路といった現実的な部分を上手く描写している点も好印象。
ただ、本筋のシリアスパートに関しては、巻を追うごとに設定が増えすぎて正直理解が追いつかない部分が…
ファンタジー要素が巻を追うごとに日常パートをも侵食し始め、初期のドタバタ感も薄れていましたし。
本筋は一巻の頃からガッツリと広げまくった風呂敷を割とあっさりと、しかし綺麗に畳む形で完結。
まあ、元々バトルをメインに置いた作品ではないので、らしいといえばらしいオチのつけ方ではあったのですが。
数年後のエピローグを挟みながら現在時間軸の話を畳んでいく、という最終巻の手法も余韻抜群でしたし。