虚構戦役の戦導師   田尾典丈(MF文庫J)



クラスメイト育成型仮想世界召喚戦記ファンタジー。
ゲーム世界に召喚、というのはそれほど目新しくない設定ではありますが、主人公一人ではなくクラス単位で。
そして、ジャンルがMMOPRGではなくシミュレーションRPGというのが珍しい。
スキルやアイテム、確率&計算が重要、などといったゲーム世界独特の色が濃いのも中々に楽しいですし。
同時に、リアルの人間関係などのゲーム外の要素が原因で、思うようにいかないというのも上手いなぁ、と。
ラストはゲームクリアを果たし、皆揃って現実へと帰還なハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの椿姫が圧倒的優勢をキープするも、決着つかずで終了。

主人公はただ一人、最初からレベルMAXの主人公ユニットとして指揮官をこなすことになった少年。
ゲーム馬鹿で、SRPG「レジェンドオブルインブリンガー」に関する知識量は他の追随を許さない。
周囲からはゲームオタクとみなされているため、クラス内では目立たず、侮られていたのだが
土壇場に強く、リーダシップと判断力に優れる面をゲーム世界では見せ、徐々に信頼されるように。
ただ、勢い任せの言動をとることも多く、性質の悪いことに、言葉そのものは常に本気であるため
異性が相手である場合、口説くような台詞になっていることもしばしばだったりする。

ヒロインは剣道部ホープの幼馴染、元天才少女棋士、寡黙な子犬系少女。
あと、ヒロイン昇格候補に数学の天才少女、寂しがりやな妹分なども。
一番のお気に入りはソーサリスのユニットを務めるクラスメイト、飛鳥井真桜。
今回と同じようにゲーム世界に召喚され、その時に自身以外は全滅してしまったという過去を持っており
そのため、生きることに絶望していたのだが、主人公の言葉に心を救われている。
何事にも動じない寡黙な性格で、ずっと無表情&無愛想でいることが多く、いつも独りでいるのだが
主人公にだけは子猫のように懐き、甘えん坊になることも。

評価はC。
SRPG好きなら、間違いなく楽しめる作品だと思います。
二桁単位のキャラが常にまとまって動くため、主要キャラ、サブキャラ、モブキャラで描写量や扱いの差が
大きいですが、これはまあ、ラノベである以上は仕方のない範囲の偏りかと。
一応、どのキャラもユニットごとの個性と役割があり、活躍する機会が描かれてはいるのですが。
本筋は結末こそ大団円ではあったものの、暗躍した黒幕には報いを与えられず、謎の大半も残ったままという
明らかな打ち切りで終わってしまったため、消化不良感が大きかったです。
キャラ、ストーリー、盛り上げの上手さといい全体的な質は申し分なかったと思うのですが
ネタがマイナーすぎたのが受けなかったのでしょうか? まだまだ話を続けられる余地はあったのになぁ、残念。