英雄教室   新木伸(ダッシュエックス文庫)



やることなすこと「超生物」な少年の、超ド級ファンタジーコメディストーリー。
魔王を倒した勇者や人類を救った英雄といった肩書きを持つ主人公は多々いますが、その上で
「勇者を辞めて普通になりたいけれど、その実力ゆえに騒動ばかり起こしてしまう」という設定が新鮮で面白い。
コメディ重視だからこその設定ですが、この極端ともいえる突き抜け具合は個人的には好感触です。
シリアス分も少なからずありますが、長々と後を引く深刻さはないので読後感も上々ですし。
主人公の精神性が子供なためラブコメ要素は薄めですが、巻を経て徐々に異性への興味が出てきている様子。

主人公は魔王を倒し、世界に平和をもたらした元勇者。
魔王戦で勇者としての特別な力を失うも、素のスペックの時点で一般生徒とは次元が違う。
そのため、本人の夢は一般人になることなのだが、周囲からは超生物扱いを受ける羽目に。
性格は素直でマイペース、感受性豊かで思い込んだら一直線、と子供っぽい面が強い。
また、幼少時から勇者として実戦の中で育ってきたため、世間一般のことや色恋沙汰に疎かったりする。
と同時に、死が常に身近にあったがゆえのシビアな考え方が表に出ることも珍しくなかったり。

ヒロインは学園の女帝、無表情クールビューティー、ドラゴンベビーな愛娘、二重人格な魔王の娘。
ポンコツ系アンドロイド、ツンデレ貴族令嬢、清楚系怪力娘、自由奔放な褐色娘、耳年増な女医。
一番のお気に入りは「氷の女王」の異名を持つクールビューティー、ソフィティア・フェムト。
常に無表情かつ無感動かつ無関心で、口を開いても感情のこもらない素っ気ない口調で喋る。
それどころか、主人公と出会うまでは命令を受けない限り、自分から何かをするということがなかった。
その正体は人口勇者プロジェクトの最後の素体であり、その生まれゆえに、保護されるまでは
実験体として物のように扱われ、まともな暮らしはしておらず、上記の人格はその時に形成された。

現時点(十五巻)においての評価はC。
環境や周囲の人間が主人公を振り回すのではなく、主人公(超生物)に振り回される。
学園や勇者といった王道の設定を使いつつも、あえてよくあるパターンの逆を行く方向性が存外に楽しい。
キャラに関しても、メインキャラとサブキャラの隔てなく気の良い面子ばかりなので不快感を覚えませんし
重いシリアス要素や緊迫の命懸けバトルもほぼ皆無なので、気を楽にして読むことが出来ます。
ファンタジーで青春学園コメディをやるとはこういうことなのだ、というお手本のような作品かと。
今後も短編中編詰み合わせなキャラ重視の構成で進むようですし、息の長い作品になってもらいたいところ。