文句の付けようがないラブコメ 鈴木大輔(ダッシュエックス文庫)
どこまでも純粋な二人の愛の喜劇。
分類としてはいわゆるセカイ系? ループと転生を組み合わせたような要素もあったりします。
まあ、本編の大半は主人公とヒロインの神鳴沢セカイがイチャつきつつダベっているだけなので
一言で纏めるなら「背景が大仰なトーク系ラブコメ」ということになるのでしょうか。
そしてこういう形式だからこそ、二人の背負う悲劇な喜劇が残酷なまでに引き立っているという。
ラストは想像を絶する苦難を乗り越え、そして彼らはハッピーエンドを迎えるのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの神鳴沢セカイと結ばれるも、他ヒロインもなんだかんだで今後も一緒の模様。
主人公は神への生贄として捧げられた名門製薬会社の御曹司(一巻時点)
やや達観しているというか、悟りを開いているようなところがあり、一見すると受け身な性格に見えるが
さっぱりとした気質で愚痴は少なく、人を悪く言うことは稀であり、常に弱者の側に立つことを心掛ける
男の鑑のような人物で、こうと決めたら物凄い行動力を発揮するタイプ。
揉め事に首を突っ込んで喧嘩をすることが多く、目つきも悪いため、周囲からは浮き気味。
ヒロインは世界を守る神様。サブに愛の重いブラコン妹、相方な学級委員、底知れぬメイド。
一番のお気に入りは千年以上生き続け、世界を守っている神、神鳴沢セカイ。
肩書きに違わず、現実離れした美しさ、神々しさを纏っており、態度や口調も尊大。
しかしその内面はまっすぐで真面目、素直でチョロい、色恋には純情、泣き虫で見栄っ張り。
そして意外にお茶目で色々と不器用、と人間らしいところがたくさんある。
葉巻と酒が好物。
評価はC。
タイトルに偽りなく、正に「文句の付けようがないラブコメ」でした。
パッと見の印象や導入だけで判断すると、軽めでほのぼのとした雰囲気の作品なのですが
そこで油断していたら、中盤以降に明かされる真相と怒涛の展開にガツンとやられます。
主人公とセカイが挑む運命、背後で動く不気味な組織、変化する世界でひたすら繰り返される喜劇。
タイトル通りで、しかしそこからはまるで予想も出来ない展開に、ただただ引き込まれました。
しかしセカイさん可愛すぎである。もう他ヒロインがまったく対抗できていないのですが。
本筋は事実上登場キャラが五人だけという世界観の狭さをものともせず、壮大なストーリーに仕上がっていた印象。
最終巻を丸々使った幸せなアフターストーリーもほっこりできましたし、読後感は申し分なし。