エロマンガ先生   伏見つかさ(電撃文庫)



ラノベ作家な兄と引きこもりイラストレーターな妹がおくる、ドタバタ兄妹ラブコメディ。
前作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と同じく、兄妹の関係が主題になっている物語です。
とはいえ、サブカルチャーが密接に関わってくるところはともかく、キャラ設定にはかなり差異がありますが。
もう一つのメイン要素であるクリエイター(ラノベ作家)も、対決展開が入ることで差別化が出来ていますし
きちんとキャラ設定と話の流れが連動した構成になっているのがいいですね。
ラストは二人の夢を叶え、そして彼と彼女は書(描)きたいものをかく新たな旅へエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの紗霧と結ばれて終了。他ヒロインは未だ諦めていないようですが…

主人公は高校に通いながらライトノベル作家の仕事をしている少年。
レーベル内での立場は速筆が取り柄の中堅作家で、得意ジャンルは学園異能バトル。
ディスられると普通に落ち込むため、ネットで自作品を検索できないなど、結構ナイーブな性格。
その一方で、一度こうと決めたら脇目も振らずに突っ走る熱血気質なところも。
義妹の紗霧のことが妹として、そして一人の女の子としても大好き。

ヒロインは引きこもりな義妹、自信家な同業者、クール系な年下の先輩作家。
サブにコミュ力最強な中学生、書店の看板娘、オレっ娘イラストレーター、クールな叔母なども。
一番のお気に入りは主人公が本を出しているレーベルの看板作家、千寿ムラマサ(本名は梅園花)
読書を愛しているが、面白い本と出会えないがゆえに自給自足で小説を書いているという変わり者。
主人公の作品の大ファンで、既作(WEB小説もちゃんと保存している)は全て読んでいる。
俗世に興味がまるでなく、常に超然とした態度で雰囲気も口調もクールな女の子だが
色恋とエロには弱く、反応も過敏。また、素は超マイペースな性格で、どこか抜けたところも。
また、一度ムキになったものに対しては、強烈な熱意と執着で猪突猛進。

評価はB。
兄妹ラブコメとしてはほぼ文句なしの出来かと。ラノベ作家という要素もきちんと活かされていますし。
とにかく、主人公と紗霧の兄妹以上恋人未満な「もうお前らさっさと結婚しろよ」な関係が最高。
キャラに関しても、主人公はまっすぐブレがないですし、ヒロインたちも素直じゃない面こそあれど
その面倒くささが魅力的であるように描かれているため、不快感を覚えません。
ただ、それだけに紗霧を除いたヒロインたちが勝ち目のない戦いを強いられているようで不憫でしたが。
主人公の感情的にもストーリー的にも、明らかに最初から勝者が決まりきっていましたしね。
まあ、他ヒロインも素直に引き下がるような性格ではないので重い展開にはならなかったのですが。
本筋は一巻の頃から掲げられていた夢を実現させての完結と、最高のハッピーエンドでした。
イラストレーター・エロマンガ先生と、ラノベ作家・和泉マサムネの物語としてこれ以上ない締めだったかと。
ただ、二人以外の面子についての言及がないまま終わってしまったため、アフターが欲しいところですが。